「高齢だからこそ」がん治療を考える上で気にしなければいけないこと。「治療すれば元どおり」とはいかない
対応を考えるうえで「75歳」が目安になります
がんの治療は、できるかぎり体内からがん細胞を排除することを目指します。ただし、治療を進めるうえでは、がんを取り除くだけでなく、治療を受けることで患者さん本人の体や生活がどうなるか予想し、効果と負担のバランスを考えていく必要があります。一般に75歳未満であれば、現時点で最善とされる「標準治療」が検討されますが、年齢が高くなると標準治療でも体への負担が重すぎると考えられる例が増えます。負担の少ない方法を工夫する、治療を急がないなど対応は分かれます。 ■標準治療の特徴 最初に検討すべき治療法と多くの専門家が認めている方法。同程度の治療効果を期待できる方法のうち、治療にともなう害が最少のものが標準治療とされています。 ・効果が確認されている 一定以上の治療効果があることが認められている ・害が少ない 副作用や、治療にともなう害が比較的少ない ・内容はいろいろ がんの種類や進行の程度によって治療の進め方は異なる。ある程度がんが進行していれば、複数の方法を組み合わせる ・保険適用あり 治療を受ける際には医療保険の適用を受けられる。自己負担額は一定額以下
年齢による健康状態のとらえ方
実年齢だけで判断できるわけではありませんが、年齢が高くなるほど、強めの治療に耐えられるだけの体力がある人は減っていきます。
「治療すれば元どおり」とはいかないこともあります
治療の結果、腫瘍やがん細胞が一掃されれば、がんの治療は成功したといえます。だからといって、がんを患う前と同じように過ごせるようになるとは限りません。 手術により体の機能の一部が失われることもあれば、抗がん剤や放射線が、がん細胞だけでなく正常な細胞を傷つけることもあります。治療の負担が体力を衰弱させ、健康状態を悪化させるおそれもあります。 がんを治療することの影響を十分に理解しておく必要があります。
がん治療で期待できること
がんの治療がうまくいけば、生活の質(QOL)の維持・向上につながります。 ■気持ちが楽になる 「治療を受けている」という事実が、がんの進行を恐れる気持ちをやわらげることもあるでしょう。 ■がんが原因で起こりうる問題を未然に防げる がんの進行による痛みや悪液質、出血や臓器の機能低下など、症状の出現や、命の危険を避けられる可能性があります。 ■寿命が延びる可能性がある 治療時の患者さんの年齢や、全身の状態によってはその可能性もあります。 ■症状の改善につながる すでに症状があった場合、病巣が消える、小さくなることで改善が期待できます。