「高齢だからこそ」がん治療を考える上で気にしなければいけないこと。「治療すれば元どおり」とはいかない
がんに罹患する方の半数近くを75歳以上の方が占めています。75歳というのは、日常生活に制限がなく過ごすことのできる期間、健康寿命とされる年齢です。 【前編はこちら】75歳からのがん治療 ~がんと年齢の深い関係~ 個人差がありますので一律にとは言えませんが、おおよそ75歳を超えると、がんへの対応は、治療の効果と心身への負担のバランスを取りながら考えていくことが大事になります。 高齢の方ががん治療を選ぶ際に知っていただくと役立つ情報をまとめた一冊『75歳からのがん治療 「決める」ために知っておきたいこと』より、役立つ章をピックアップしてお届けします。 前編<75歳からのがん治療 ~がんと年齢の深い関係>
「高齢だからこそ」の問題を明らかにしておきましょう
がんは放っておけば進行し、周囲に広がったり離れた部位に転移したり、全身をむしばんでいくおそれがある病気です。高齢者はがんの進行が遅いというイメージがあるかもしれませんが、進行の速さはがん細胞の性質(悪性度)によるところが大きく、高齢だから進行が遅いともいえません。 一方で、年齢が高くなればなるほど、がん以外にも体の不具合がある人や認知機能の低下が目立つ人が増えます。若い人と同じようには治療を進められないこともあります。
高齢のがん患者さんの特徴
年齢が高くなるにつれ、がん以外にもさまざまな問題をかかえやすくなります。 ■余命は若い世代にくらべると短い たとえば今75歳の人の平均余命は12~15 年程度、80 歳なら8~11年程度です。 ■心身の機能低下がみられる がんの有無にかかわらず、老化は進みます。身体的な機能の低下、認知機能の低下が目立つ人も増えます。 ■多種類の薬を常用している人が多い がんの薬物療法が加わると、薬の管理に困ることが少なくありません。 ■生活面の問題をかかえやすい 人づきあいが減り、社会的に孤立している人、経済面で不安をかかえている人が多く、自ら必要な援助を求められない人も少なくありません。 ■がん以外にも複数の病気をかかえていることが多い 心身の状態によっては、がんの治療を受けても受けなくても、がん以外の病気で命を落とす可能性もあります。 ■「フレイル」が増える 心身の衰えが進み、介護が必要になる一歩手前の状態を「フレイル」といいます。年齢が高くなるほどフレイルの状態と考えられる人が増えます。がんの治療が負担になり、フレイルが進むこともあります。 ※個人差がきわめて大きい がん以外には問題のない元気な人もいれば、がん以外にもさまざまな不調をかかえている人もいます。 個人差がきわめて大きいのは高齢者の特徴のひとつです。価値観も多様で、それががんとの向き合い方にも反映されています。