法律制定の背景に「家庭の事情の複雑化」も…配偶者を亡くした〈妻・夫〉の生活を守る「配偶者居住権」とはなにか?【税理士が解説】
配偶者居住権は「節税」になる?
◆配偶者居住権は消滅する 節税のために配偶者居住権を設定することも考えられます。 (1)配偶者の死亡により配偶者居住権が消滅 ⇒ 相続税の課税はない 配偶者居住権は、配偶者が死亡した場合には、消滅します。その結果、子どもの建物・敷地の所有権は完全な所有権となります。 これは配偶者からの財産の取得ではありませんから、課税関係は発生しないと考えられます。つまり、配偶者居住権は、一身専属的な権利であり、財産としての価値はないとされています。 (2)配偶者生存中に配偶者居住権が合意解除 ⇒ 贈与税が課税される 配偶者が生存中でも、合意・放棄により配偶者居住権が消滅する場合があります。 配偶者居住権が消滅すると、結果として、その目的とされた土地建物は完全な所有権に復元しますが、その時はまだ契約が残っていますし、配偶者が亡くなってもいないので、財産価値はあります。 したがって、配偶者から子どもなどの土地建物の所有者に財産的価値が生前に移転しますから、子どもに贈与税が課税されます。 (3)配偶者居住権と所有権の関係は複層的 ⇒ 配偶者居住権は利用する権利 子どもは不動産の所有権は持っていますが、配偶者には居住権がありますので、無償で建物と土地を使用させる義務を負います。その期間は配偶者が生きている限りの終身とされています。また、固定資産税は居住している配偶者が負担することになっています。しかし、固定資産税の課税通知は所有者である子にいきますので、精算が必要です。 配偶者居住権は登記しないと第三者には対抗できませんので居住建物所有者である子は配偶者と共同で申請する義務があります。 設定登記は建物にのみ行い、土地には行いません。 深代 勝美 公認会計士、税理士、行政書士 深代税理士法人 理事長、(株)アンテックス代表取締役社長、経営コンサルタント
深代 勝美