「失敗を恐れずとにかく挑戦」日本人として15年ぶりのF1チーム代表就任、初年度にしてハースを再建に導いた小松礼雄の手腕
小チームゆえの課題
3つ目の改革案は、チーム内のコミュニケーションの改善だった。そこには、ハースというチームが抱える特殊な環境が大きく関係している。 ハースはアメリカ籍のチームだが、イギリス・バンベリーにファクトリーを構えている。ただし、フェラーリと空力開発面で業務提携しており、イタリア・マラネロにも開発拠点がある。また、車両の開発においてはイタリアの大手レーシングカーコンストラクターであるダラーラと技術協力の関係にある。 必要に応じて外部に委託することでハースのような小さなチームでもF1で戦っていけるというメリットがある反面、マシンを開発・製造するにあたって密な連携をとれないというデメリットが生まれやすい面もあった。それはハースを長年悩ませてきた課題だった。 24年のモナコGPでは、それが悪い結果となって露呈してしまった。ハースはモナコGPに特別仕様のリアウイングを投入したが、DRS作動時にレギュレーションよりも開口部が広く開いてしまい、予選後の車検で失格となった。だがこれは、デザイナーがメカニックに新しいウイングを異なる方向でセットアップするよう伝えていれば、防ぐことができた事案だった。 しかし、小松は担当スタッフを叱責することはしなかった。それよりも、なぜミスが起きたのか、ミスを再発させないためにはどうするべきなのかをオープンに話し合うよう求めた。そういったプロセスを繰り返した結果、チーム全体のミスが減っただけでなく、スタッフたちがミスを恐れずにチャレンジするようになり、そのチャレンジを全員でカバーするという文化が根づいた。気がつけば、離れている拠点間がより強い信頼関係で結ばれていた。 その変化を、ハースに7年間在籍したケビン・マグヌッセンは次のように指摘した。 「アヤオが代表になって一番変わったのは、チーム内のコミュケーション。本当に風通しが良くなって、みんなが意見を積極的に言える環境になったよ」 24年のF1はいくつかのチームが開発でつまずいたが、ハースはシーズンを通して着実にマシンを進化させることに成功した。レース中のタイヤマネージメントも前年に比べて飛躍的に改善。中盤戦以降は常に4強を除く中団チームでトップ争いを繰り広げ、コンストラクターズ選手権では前年の最下位から7位に浮上した。いずれも、小松がチーム代表になったことの成果なのは言うまでもない。
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