保護司殺害「誇れる生き方を」支援受け誓う男性、「身内殺められた気持ち」迷いも生まれた保護司仲間…それぞれの思い
大津市の自宅で5月、保護司新庄博志さん(60)が殺害された事件は18日、当時保護観察中で新庄さんが担当していた無職飯塚紘平容疑者(35)が殺人罪などで起訴され、大きな節目を迎えた。今月24日で事件の発生から半年。新庄さんから更生支援を受けた男性や保護司仲間は悩み、迷いながらも、前に進もうとしている。 (青山大起、藤岡一樹)
現在は同市内の宿泊施設で働く男性(27)が新庄さんと出会ったのは、18歳だった2016年。非行に走り、保護観察処分を受け、担当になった保護司が新庄さんだった。
「どこの誰かもわからない。本音で話せるわけでもない」。初めは心の壁を厚くしていた。しかし、事件を繰り返しても少年院や刑務所まで面会に訪れて自分と真剣に向き合おうとする姿に、「保護司として、しなくてもいいことまでしてくれる。この人は裏切れない」と思うようになった。
出所して社会に復帰したものの、すぐに全てがうまくいくわけではなかった。誰かにいらつき、会社で嫌なこともあった。新庄さんに相談すると「腹が立っても笑顔で向き合えば、人は必ずそのうち認めてくれます」と、気持ちを収めるようメールをくれたという。
「新庄さんから色々いただいた言葉で感情を抑えることができ、社会経験がない僕でも居場所をつくることができた」と感謝する。保護観察期間は今年2月に終わったが、「保護司という枠を超え、社会人の先輩として尊敬していた」と、その後も電話するほど信頼を寄せていた。
5月、事件を知った時、なかなか現実を受け止められなかったが、時がたつにつれて「前に進むために何をすればいいか。新庄さんに、社会人としていい報告ができるような生き方をしたい」と考えるように。事件の裁判を見届けるのも一つ、真面目に更生した姿を見せるのも一つ――。届いたメールを時折見返しながら、将来について思いを巡らせている。
勤務先の宿泊施設では、食事に使う野菜づくりを担当しており、事件の前には、家庭菜園をしていた新庄さんからスナップエンドウの種をもらった。「収穫できたら、新庄さんの家族に渡したい」。近く、職場の畑の一角に植えるつもりだ。