脱毛サロンなど「エステ業」倒産が過去最多 数万人が泣き寝入り、被害に遭わない方法は
自転車操業の前金ビジネスは、集客が止まった時点でアウト
J‐CASTニュースBiz編集部は、東京商工リサーチ情報部の調査担当者に話を聞いた。 ――ここにきて脱毛サロンなどの倒産が急に増えた背景には、ズバリ何があるのでしょうか。 調査担当者 人手不足や光熱費など、物価高に伴う運営コストの上昇、そして何よりも競争激化が背景にあります。もともとエステ業界は金融機関からの資金調達が難しい業種です。 急成長した後に倒産したサロンの多くが、著名タレントを使ったりする積極的な宣伝広告で集客します。数十万円を支払えば一定期間施術を何度も受けられる「通い放題プラン」などを掲げ、長期間の契約を結んで将来利用されるコストを先食いする形で、さらなる宣伝や出店費用に充てるパターンが多くみられます。 こうした自転車操業の前金ビジネスでは、集客が止まった時点で資金繰りが破綻してしまいます。 ――そうした背景には、男性を含めてエステに通う若者が増えたことや、業界全体の過当競争があるのでしょうか。 調査担当者 男性の美意識が高まっていることもあるのかもしれません。エステサロンは特別な資格や免許がなくとも開業できるため、比較的新規参入の障壁が低く、店舗数は年々増加しています。大手や成長企業、地場に根付いた個人サロンの小規模事業者などと競合店が多く、飽和状態と言えるでしょう。 「脱毛」「フェイシャル」「痩身」...と、どのサービスでいくのかとか、特徴を打ち出すために多様なサービスを提供する店舗が増えてきましたが、結局はコストに見合う価格設定が難しく収益確保が厳しくなっているようです。
エステティシャンがコロナに感染したのがトドメに
――消費者庁や国民生活センターなどが警鐘を鳴らし続けてきたことや、詐欺まがい商法に対する行政当局の対応、世論の批判も背景にあるのでしょうか。 調査担当者 契約知識の乏しい若者が、数十万円といった多額の契約を締結するケースが多く、契約や返金方法、解約した場合のリスクなど、知識不足でトラブルになるケースが増えています。 特に、前払い金のリスク告知を徹底せず、お金を払ったのに予約を入れられないケースもあります。こうしたことから世間的な批判が大きくなっていると思います。 ――今年(2024年)に入ってからの代表的な倒産では、どんなケースがありますか。 調査担当者 11月25日に倒産したばかりのセピアプロミクス(本社名古屋市)は、「Be・Escort(ビー・エスコート)」の店名で、東海地方を中心に全国で約50店舗を展開していました。1997年に設立した当初は賃貸ビルの管理を手がけていましたが、エステブームに乗って4年後に脱毛や美肌中心の美容サロンに参入したのです。 約20の直営店やフランチャイズ店による積極展開を図っていましたが、過去の出店費用やエステ設備の購入資金などの資金負担が重荷となり、厳しい経営が続いていました。 特に、コロナ禍でエステティシャンがコロナに感染するなどして、店舗運営に支障をきたす事態が相次いで発生。今年10月に一部店舗が休業となり、動向が注目されていましたが、事業継続を断念したようです。 破産管財人の弁護士などによりますと、多額の税金滞納があり、利用者が前払いした料金の返金は「極めて困難」だとしています。
契約前に、SNSの評判や国民生活センターの情報を調べよう
――また、多くの被害者が出そうですね。今後、利用者はどういう点に気を付ければいいでしょうか。 調査担当者 若者を中心に、美への欲求は強いものがあります。ニーズが多いので、店舗も増えて競争が激しい状況は今後も続く見通しです。長期や多額の契約する場合、企業の信用度や評判を慎重に判断し、リスクを最小限に抑えることが必要です。できればSNSの評判や国民生活センターなどの情報も調べたほうがよいと思います。 (J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎)