トヨタ高級車「新型クラウン」なぜ“4車種”も存在? しかも「SUVタイプ」が3車種!? 過去のイメージ覆す「革新と挑戦」の理由とは
なぜ「クラウン」は4車種に別れた?
トヨタの伝統的な高級車「クラウン」は、セダン型を基本としつつ、ワゴンやピックアップトラックなど複数タイプを用意することは過去にもありました。 しかし、現行モデルは4車種と同時にラインナップし、かつてなくバラエティに富んでいます。 しかもそのうち3車種がSUVタイプと、従来のクラウンとは大きく異なる様相を見せていますが、その背景にはどのような理由があるのでしょうか。 【画像】カッコいい! これがトヨタ新型「クラウン」シリーズです(79枚)
現行クラウンは、セダンのほかに「クロスオーバー(SUV)」「スポーツ(クーペSUV)」「エステート(SUV)」と、合計4タイプを設定。 これは1955年の初代モデル誕生から60年を超えるクラウンの歴史において初めての状況です。 もともとクラウンは、5年もの研究試作を経て誕生した国産初の高級セダンで、つまり“セダン”であることがクラウンという存在の根底にありました。 そして昭和の時代には「いつかはクラウン」というフレーズが流行し、憧れのクルマとして非常に高い人気を誇ります。 そんなクラウンの人気は平成の時代に入っても依然として高く、10代目のデビューした翌1996年の年間販売ランキングでは、当時の国産車における絶対王者の「カローラ」に次ぐ2位の座をクラウンが獲得しています。 そのように2000年代前半までクラウンは、年間販売ランキングでトップ10を定位置とするほどの人気モデルだったのです。 ところが、2010年以降は風向きが一変。クラウンの年間販売ランキングは、10位以内どころか、20位以下が当たり前になってしまいます。
「クラウン」が急速に不振となった理由とは?
クラウンが急速に不振となった理由は、2つ考えることができます。
ひとつは、「クラウンに限らずセダンそのものが売れなくなってしまった」こと。 先述のように昭和の絶対王者だったベストセラーセダンのカローラは、2007年を最後に販売ナンバー1の座を獲得できていません。 また2000年以降は、ミニバンやSUVの人気が高まるのに反比例してあらゆるセダンの売れ行きが下がっていき、日本の全メーカーからセダンのラインナップそのものが激減してしまうほど不人気タイプとなってしまったのです。 ふたつ目の理由は「高齢化」です。 長い歴史を持つクラウンは、昭和を知る高齢の世代に絶大な人気を誇っていましたが、そちらに気を配るあまり、新規の若いユーザーの獲得に苦戦していました。 実は先代クラウンの登場した2018年の時点で、クラウンユーザーの平均年齢は65歳にも達していました。 65歳といえば、一般的には“定年退職”する年齢です。その世代には「もう高級車は要らない」と考える人も少なくないでしょう。クラウンにはユーザーの先細りという危機が迫っていたのです。 そのような高齢化の対策として、トヨタはクラウンという車種のイメージとユーザーの若返りにも力を入れていました。 2012に発売した14代目クラウンでは、大胆なデザインを採用しピンクのボディカラーも用意するなど、従来のイメージを刷新する戦略を導入。 続く2018年の15代目はより若々しい斬新なデザインに加えて、ドイツのニュルブルクリンクサーキットで走り込んで開発するなど、スポーティさをアピールしています。 しかし、そうした涙ぐましい努力も大きな結果には結び付きません。15代目クラウンの2020年の年間販売ランキングは32位、2021年は29位、2022年は31位と低空飛行のままだったのです。