大学主催の「年内入試対策セミナー」が人気 高校の教員からも「指導が大変なので」と歓迎の声
総合型選抜や学校推薦型選抜を取り入れる大学が増えています。学力で一発勝負する一般選抜とは異なり、合否の鍵となるのが自己PRや志望動機です。桜美林大学では、高校生を対象に対策講座を開講し、受験生を支援しています。高校の教員からも「役に立つ」と好評です。背景には、高校の現場では対応しきれないという現実もあります。(写真=桜美林大学提供) 【写真】「総合・推薦型入試準備セミナー」のワークブック(写真=桜美林大学提供)
私立大の6割は「年内入試」で入学
総合型選抜(旧AO入試)は、1990年に慶應義塾大学の総合政策学部、環境情報学部が日本で初めて導入し、各大学がこれに続きました。昨今は年内に合格が決まる総合型選抜や学校推薦型選抜を取り入れる私立大学が急増しており、一般選抜が4割、総合型選抜・学校推薦型選抜が6割となりました。 国立大学は2000年度に東北大学、筑波大学、九州大学が初めてAO入試を実施しました。さらに15年に国立大学協会がまとめた「国立大学の将来ビジョンに関するアクションプラン」で、21年度までに総合型選抜、学校推薦型選抜の割合を入学定員の30%に拡大することが目標に掲げられ、一気に国立大学にも広がりました。私立大学の独壇場だった総合型選抜、学校推薦型選抜ですが、今では国立大学の8割で行われています。
年内入試の対策講座が人気
総合型選抜、学校推薦型選抜の拡大以前から、桜美林大学ではこれらの入試を目指す高校生を支援する「総合・推薦型入試準備セミナー」の講座を設けています。この講座は同大学が展開している高校生対象のキャリア支援セミナー「ディスカバ!」プロジェクトの一環として設けられたものです。 学長補佐も務める高原幸治入学部部長は、セミナー開講の経緯を次のように話します。 「本学は慶應義塾大学に次いで、1996年度からAO入試を導入しました。ただ、私立大学を中心にAO入試の導入が拡大する中で、出願書類の質が低下するようになりました。特に志望動機を読むと、内容が抽象的だったり曖昧だったりして、いまひとつ熱意が伝わってこない受験生が散見されました。文章作成が苦手なために本人の意欲が伝わらないのは、受験生にとっても非常にもったいないことです。そこで、自分の思いを適切に伝えられるようなトレーニングの講座を開講することにしました」 講座は2016年に始まり、当初は対面で行い、800人近い高校生が参加していました。しかし、コロナ禍で対面が中止となったことを機に、20年からオンラインに移行しました。 「オンラインへの移行で会場設営の負担が減ったので開催日を増やすことができ、高校生も全国から応募してくれるようになりました。現在は週に1度のオンラインでの講座とともに、年に数回、キャンパスでの対面開催や、要請があった全国各地の高校を回って開催しています」 講座は約2時間。毎回20~40人程度の高校生が参加しています。主な内容は、「自己PR」と「志望動機」を作成するための自己分析です。事前に配布されたワークブックを使って、4つのワークに取り組んでいきます。 その間、グループごとに発表したり、意見を交換したり、質問をはさんだりしながら、講師がファシリテーターとして高校生から興味や関心を引き出していきます。訓練を受けた桜美林大学の学生が講師を補佐することで、高校生から活発な意見が出されます。セミナー終了後には、入試に活用できる「自己PR」と「志望動機」の土台ができあがります。 「受験に対して漠然とした不安を抱えている高校生も多いと思いますが、セミナーに参加することで、自分は何をすべきか道筋が見えてきます。参加した高校生は、気持ちが前向きになってやる気が湧いてきたと感想を述べています」