Jリーグ過去最多観客動員、もろ手を挙げて喜んでいいのか…J1の平均入場者数はコロナ禍以前の水準に戻らず
◇記者コラム「Free Talking」 サッカーのJ1、J2、J3のリーグ戦の合計入場者数が5年ぶりに過去最多を更新した。今季末の見込みとして「1100万人台中盤から後半」に達するといい、「歴史的な活況」などと報じるメディアもあった。 観客動員をけん引しているのはJ2とJ3で、コロナ禍以前の2019年と比較すると、1試合平均(10月末時点)でJ2は108%、J3では137%を記録。地上波の露出増加(ローカル露出量は前年比150%)や注力試合の設定、デジタル投資の強化などJリーグの主導施策が主な上昇要因という。 J1ではFC東京、名古屋などが過去最多の1試合平均観客数をマークしている。新スタジアムが開業した広島は1試合平均で昨年比158%、東京Vは昨年(J2)比258%と驚異的な伸び率を記録。リーグ施策「THE国立DAY」として、国立競技場を活用した合計11試合(55万3000人)では1試合平均5万300人を集めた。 今季から20チームになったJ1はリーグ戦の合計が306試合から380試合に増えた。ACLに出場する4チームは過密日程を強いられ、雷雨や台風の影響で延期になった試合は国際Aマッチウイークに初めて組み込まれた。J1は試合増に伴い、チーム、選手の負担は確実に増している。Jリーグの樋口順也フットボール本部長は「各ローカルエリアで20という”面”が増えたこと、J1自体の入場者が増えていることのメリットの方が極めて大きいと感じている」と言う。 試合増によってJ1の合計入場者数は19年比107%。累計では上々のように映るが、1試合平均は19年比97%にとどまり、全体としてはコロナ禍以前の水準に戻っていないとも言える。鳥栖と福岡は1試合平均1万人を下回り、鳥栖にいたっては19年比63%と大幅減。湘南、新潟、京都、神戸、平日開催が多い横浜Mも1試合平均では昨年から減少している。 三菱UFJリサーチ&コンサルティングが10月末に発表した調査結果によると、Jリーグのファン人口は推計952万人(昨年比11.5%増)だった一方、19年比では89・7%と見逃せない数字でもある。 観客動員はプロスポーツ興行の根幹を担う。過去最多の合計入場者数に対して、もろ手を挙げて喜んでいいのか。数字を多角的に分析し、実像を見極める必要があるだろう。(サッカー担当・松岡祐司)
中日スポーツ