1分のために全人生をかける──絶対女王・安井友梨が明かすビキニフィットネスへの葛藤 #なぜ話題
あらためて、安井の思うビキニフィットネスの魅力はどこにあるのだろうか。 「年齢を問わず、美しくなりたいという願望をかなえてくれるスポーツです。つま先から頭のてっぺんまで、筋肉だけではなく美しい立ち振る舞いや姿勢、ヘアメイク、ネイル、コスチュームといったすべてが審査対象なので、大会の日に自分史上最高の美に出合える。ステージに立つたった1分のために、文字通り全人生をかけて、365日24時間を過ごすんです。昔は、人は若ければ若いほど美しいと思っていたんですが、ビキニフィットネスを始めたら、去年よりも今年、昨日よりも今日の自分のほうが絶対にいいと、自信をもてるようになりました。いまより未来はよくなると思えるのが、ビキニフィットネスの魅力かなと思います」
5年前から抱えていた葛藤
昨年、「世界一」の頂についに到達することができた安井。勝因の分析を問うと、その裏にあった骨折のアクシデントに加え、これまで抱えていた無敵の女王ならではの競技への葛藤があったと明かしてくれた。 「正直なところ、5年くらい前から、この競技に対する情熱が失われかけていました。日本で連覇しながら、世界では勝てない。それでも勝たなければいけない、負けられないという重圧に押しつぶされそうになりながら、なかばやらされているような状態でトレーニングしていました。ところが今回、世界選手権の3カ月前に左足の親指を骨折してしまったんです。週7回通っていたトレーニングがまったくできなくなって、初めてトレーニングできることのありがたみを痛感しました。当たり前じゃないんだ、恵まれていたんだって」
骨折した左足だけではなく、全体的に筋量が低下してしまった。それでも懸命なリハビリを経て、自力でしゃがめなかった状態から、自重でスクワットができた、バーベルが持てた、重りがつけられた――と、まるで初心に帰るような成功体験を積み重ねていった。その過程は涙が出るほどだったという。 「この競技を続けて9年。競技ができることへの感謝と喜びを、9年かけてようやく知ることができたんです。勝利への重圧ではなく、ただステージに立ちたいという純粋な気持ちで世界選手権に臨むことができました」 これまでで一番うれしかったのは「初優勝したとき」。まるでその頃と同じように、純粋にステージを楽しめたという。そのすがすがしさとさわやかな笑顔が、彼女を世界一の称号へ導いたといえるかもしれない。