キーコーヒー上場30周年 柴田社長が語る上場への思いと株主との理想の関係とは?
上場に込めた父の思いとは?
入社後は購買・営業部門などを経て、経営企画部の上場チームを経験。この中で柴田社長の一番の思い出としては、ホレカ(ホテル・レストラン・カフェ)向けの営業を挙げる。 「外資系のホテルが増え始めてきた1990年代に、大阪や東京を飛び回って売り込んだ。お取引先には外国の方もおられ語学力や当時日本には馴染みのなかったエスプレッソへの知識を求められることも多かった。ホレカ市場を担当したことで、生産国だけでなく、焙煎機のメーカー様やお取引先様などさまざまな国とのつながりを実感した」とかえりみる。 キーコーヒーは1989年、現社名へ変更するとともに、コーポレート・アイデンティティを導入。創業74年目となる1994年の1月21日に、店頭公開を実現した。上場には、父・柴田博一氏の思いが反映された。 「父は、全国展開を視野に、上場によって個人商店的な体制から脱却して社会の一員として信頼度を上げていくことに強くこだわっていた。キーコーヒーの認知度が低い地域でも継続的に取引ができる企業として見てもらいたいという営業的な思いもあった」と説明する。 1996年に東証市場第二部に、翌97年には市場第一部に上場する。 柴田社長は2002年から現職。社長就任時、38歳だった。 就任時の心境について「いつか引き継ぐとは思っていたが、内示を受けたときは“こんなに早く”と驚いた。しかしながら、他社様で社長に就かれた同世代が多かったこともあり“自分も頑張らねば”と鼓舞される気持ちもあった」と吐露する。 社長就任時に定めた目標は、企業力の向上。 「コーヒーが定着し市民権を得た今、企業としての存在感をさらに向上させたいと思った。一般の方や株主様に、農園事業も含めトータルでどんなことをやっている会社なのかをもっと訴求したいと考えた」という。 2022年には、東証の市場区分が再編。その中でキーコーヒーは、株式の流動性などの指標のほか、サステナビリティなどの企業の姿勢が認められ、市場第一部から再編後の最上位となるプライム市場へと移行した。