被災地で進む「緑の防潮堤」 津波を抑えることはできるのか?生育と防災効果を探る #これから私は
それでも、東北の被災地以外に高知県や大阪府、三重県で、小規模ながら、森の防潮堤づくりが始まっている。いずれも南海トラフ地震への備えが必要な地域だ。 東京農業大学地域環境科学部の鈴木伸一教授は、森の防潮堤に求められている効果は「しなやかさ」だと言う。 「コンクリート堤防と違って、物理的に津波をブロックするのではなく、樹木のもつしなやかさによる減衰効果。また、景観や生態系保全の効果も『しなやかさ』に含まれていると言えるのではないか」 災害に対してはハード面だけでなく、避難計画などを含めたソフト面の対策も欠かせない。「しなやかさ」の言葉通り、ソフトとハードをつなぐものとして、人の関わる「森」づくりが広まることを期待したい。
--- 宮脇昭(みやわき・あきら) 横浜国立大学名誉教授。1928 年、岡山県生まれ。広島文理科大学生物学科卒業。ドイツ国立植生図研究所研究員、国際生態学会長などを歴任。地球環境戦略研究機関国際生態学センターの終身名誉センター長 関口威人(せきぐち・たけと) 1973年、横浜市生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学大学院理工学研究科(建築設計)修了後、中日新聞社に入社、2008年に退社してフリーに。名古屋を拠点として防災や環境、地方経済などをテーマに執筆。著書に『ぼくたちは何を失おうとしているのかーホンネの生物多様性』(樹林舎叢書)