富士屋ホテルは「まるで竜宮城のよう」建築家・千葉学さんが感動したホテル、憧れの宿ベスト3
公共建築から住宅まで数多くのプロジェクトを手掛けている千葉学さん。東京出身で多趣味の千葉さんの心をとらえ、惹かれるホテルや宿はどれもエンターテインメント性に満ちています。 【写真集】有名建築家おすすめの感動する宿・ホテル 【Profile】 ちば まなぶ/1960年東京生まれ。1985年東京大学卒業。1987年東京大学大学院修了。1987~1993年日本設計を経て、2001年千葉学建築計画事務所設立。東京大学大学院教授。日本建築学会賞、村野藤吾賞など受賞も多数。
1.千葉さんがこれまでで、最も感動したホテル「富士屋ホテル」(神奈川)
1878年に創業した日本のクラシックホテルの草分け的存在ともいえる「富士屋ホテル」。以来、国内外の多くの著名人が訪れた、箱根を代表する存在です。東京生まれの千葉さんにとって、幼い頃からいちばん身近なリゾートといえば箱根だったといいます。 「つづら折りの道沿いにいきなり現れる富士屋ホテルの姿は、まるで竜宮城や宮崎駿監督の作品の世界に来たようでワクワクします。木造で障子や格天井があるのと同時にモダンでもある。その独特な和洋折衷はとても魅力的です。 ダイニングやロビー、レセプションなどは、どこか住宅的で親密なスケールになっていて、ワクワクと同時に安心できる。どこを見ても飽きない、魔訶不思議な雰囲気を醸し出しています。ホテルというのは、非日常的な場でもあるのでこのキッチュさは本当に楽しいですね」と千葉さん。 さらに千葉さんは富士屋ホテルの建築的な魅力を次のように語ります。 「僕は魅力的な建築になるのには、設計者や職人などつくった人たちのエネルギーの総量が大切だと思うんです。それが人の心を打つ。まさにここには、その熱量が感じられます。例えば一般的に日本の建築は線を減らしがちですが、むしろこのホテルに関しては線がとても多い。その装飾性や、つくり手の思いが大人になってから訪れても胸を打ちます。街全体がワンダーランドのような箱根。富士屋ホテルは、増改築を繰り返しながらも、ずっとこの街の象徴のような場所です」