ニア・アーカイヴスが語るジャングルとUK音楽文化の再定義、多文化・多人種的であること
近年、ジャングル~ドラムンベースが再び「時代の音」として求められているのは多くの人が気づいていることだろう。英国クラブシーンでは数年前から人気が再燃していると言われるが、メインストリームも巻き込んだ現象として広がったきっかけはやはりピンクパンサレスのブレイク。そこからNewJeansやドージャ・キャットなどがオリジナル曲やリミックスでドラムンベースを取り入れたり、ケニア・グレイスのドラムンベースポップ「Strangers」が全英No.1ヒットを獲得したりするなどして、大きな広がりを見せてきた。そしてこのニア・アーカイヴスは、イギリスのジャングルカルチャーのど真ん中から登場した新世代。今注目を浴びているのはクラブカルチャーの外側=ポップからドラムンベースにアクセスしてきたアーティストが多いが、ニアは言わば英国クラブ/ジャングル文化からのポップに対する回答である。 【画像を見る】ローリングストーン誌が選ぶ「歴代最高の500曲」 そんな彼女のデビューアルバム『Silence Is Loud』は、現場で鍛え上げたパワフルなジャングルのブレイクビーツが通底しつつ、これまで以上にポップソング的なアプローチを強めた作品だ。そしてアートワークや最新のアーティスト写真にユニオンジャックが使われていることが象徴するように、「英国的」であることが標榜されている。ここでの英国性とは多文化・多人種的であること、ハイブリッドを称揚することを意味する。そもそもイギリス発祥のジャングルとはジャマイカのサウンドシステムカルチャーとイギリスのレイヴカルチャーの融合であるし、彼女がこのアルバムで試みているのは黒人文化にルーツを持つジャングルと白人文化であるブリットポップ/インディロック的なソングライティングの融合でもあるからだ。その意味において、『Silence Is Loud』は白人男性中心主義的だったブリットポップの再定義という側面もあるだろう。 既に発表されている通り、ニア・アーカイヴスは8月16日(金)に幕張メッセにて開催されるソニックマニアで早くも2回目の来日を果たす。初のアルバムをリリースし、進化を続ける彼女の今をフェスの大会場でぜひとも体感してもらいたい。