円安だから株高という「因果関係説」に疑問 現状は「同時進行説」が有力
次に(2)について考えてみたいと思います。韓国は日本と同様に非資源国の工業国で製造業分野において日本とライバル関係にあり、自動車、半導体等電子部品、家電、造船、鉄鋼、化学など様々な分野で競争を繰り広げています。それゆえ、通貨高は輸出企業にとって打撃となるはずですが、株価との関係は「ウォン高・株高」です。2005年以降の長期データで相関係数の絶対値が0.6と比較的大きいことを踏まえると、これは単なる偶然ではありません。また、韓国は貿易黒字国ですから通貨高に伴う輸入コスト削減が企業収益を大きく押し上げるとも考えにくいです。この点からも、日本の円安→株高という「因果関係説」を疑ってみる価値があるでしょう。
そこで(3)の2000年代前半における日本に目を向けてみます。まず目に付くのは、2001年から04年頃までは「円高・株高」「円安・通貨安」の関係にあったことです。 為替市場では2001年から03年にかけて円が売られたにもかかわらず、株価はITバブル崩壊、銀行の不良債権問題などが嫌気され、日経平均株価は2003年にバブル崩壊後の安値を更新しました。その後は03年後半頃から円高となりましたが、株価は上昇傾向にありました。もちろんその当時も、日本は資源を持たない工業国で、なおかつ貿易黒字(同時に経常黒字)という経済構造でしたから、円安が日本企業の追い風、円高が逆風になったはずです。 しかしながら、興味深いことに当時は「円高・業況改善」という関係が成立していました。日銀短観をみると大企業製造業の業況判断DIは円高局面で改善していました。因果関係において為替を「原因」とするならば、円高が製造業の業況改善につながったというのは、さすがに無理がありますから、それによって業況改善という「結果」が導き出されるのは合点がいきません。こうして考えると、円安の結果として株高という「因果関係説」はますます疑わしくなります。