人口減少社会で進んでいるもの ── 核家族化よりも単身化と家族の多様化
子どもの居住地によって見た高齢単独世帯
高齢単独世帯と高齢夫婦のみ世帯を合わせて、高齢者のみ世帯として把握するケースが、行政の資料などにはよく見られます。こうした世帯は、同居人からの生活サポートを受けられないという点で、生活に困難を抱えやすい層であるといえます。また、昨今増加する孤独死の予備軍という認識もあるでしょう。ですが、こうした世帯の高齢者には健康な高齢者も含まれていますし、地域社会の人間関係が豊富で孤立死とは無縁であるような高齢者も含まれています。 家族の多様化が進んでいると書きましたが、高齢者の世帯やその生活状況も多様化しています。ですから、単純な家族類型や高齢者のみ世帯であるという情報だけではそれぞれの施策が対象とする高齢者像を把握することが難しくなっています。もう少し、施策の主たる対象となる高齢者を特定したいということで、高齢単独世帯について、子どもの居住地の別に見てみましょう。たとえ一人暮らしであっても、ごく近くに子どもが住んでいれば、同居と同じような生活サポートを受けられる可能性があります。
図2は2016年の国民生活基礎調査を用い、高齢単独世帯について子の居住地別割合を示したものです。最も大きい割合となるのは「子どもなし」であり、男性は50%を超えています。この多くは結婚をせず、未婚のまま高齢期を迎えた人たちであると推察されます。この高齢単身者は子どもからの生活サポートを期待できない分、公的サポートの重点対象となる人々といえるでしょう。 近隣地域とは、同じ町内会、回覧板が回される程度の範囲と定義されていますので、同一家屋、同一敷地、近隣地域までは子どもが近居していると見ていいでしょう。その割合の合計は、男女計で16.9%、男性で11.6%、女性で19.4%であり、同一市区町村にまで広げれば順に35.6%、25.3%、40.3%となります。 多数を占めるというわけではなく、男女差も大きいですが、一定程度は親子が日常的に関わりを持ちうる距離にお互いが居住しているとみてよいでしょう。高齢の独居者は皆、子どもとの関わりがないというわけではありません。「子どもが近居しているから大丈夫」とは限らないかもしれませんが、このように家族類型としては表れてこない親子の居住地の関係を見ることで、より公的サービスを提供するべき対象を特定して把握することが可能です。