不動1位人気の猫種が抱える耐え難い痛みと「かわいい」で生み出される猫たちの悲しみ
SNSで議論を呼んだ大型犬のアラスカンマラミュートと小型のポメラニアンのブリーディング。「ミックス犬」「ハーフ犬」「ハイブリッドドッグ」「デザイナードッグ」などというネーミングで増えている異なる犬種の交配の犬たちの問題を前編でお伝えした。しかし、この問題は犬だけではない。猫でも同じような問題が起きている。猫は犬よりも雑種化は進んではいるが、一部猫種によっては、健康に問題が起きる「無理な交配」になることもある。 【写真】16連覇の人気を誇る人気猫種の意外と知られていない問題 中でも、人気猫種のスコティッシュフォールドに関する交配は、「慎重であるべき」というのが、海外でも浸透している。しかし、日本ではダントツ人気が続き、未だにスコティッシュフォールドの問題について知らない人も多い。それは一体どういうことなのか、前編『神への冒涜!? 大型犬×小型犬のミックス犬も…人間が生み出す「罪深い交配の現実」』に引き続き、俳優で、公益財団法人動物環境・福祉協会Eva理事長をつとめ、動物愛護活動家である杉本彩さんと、日本獣医生命科学大学特任教授で獣医師の田中亜紀さんに話を伺った。
16年連続1位の人気猫種が抱える健康問題
折れた耳が特徴のスコティッシュフォールド。ペット保険で知られるアニコム損害保険株式会社の猫種人気ランキングでは、1位を16連覇している超人気種(※1)でもあり、有名人でも飼育している人は多い。 しかし、歴史が長い猫種ではない。特性の“折れ曲がった小さな耳”は、たまたま起きた耳の奇形から始まったと言われている。1961年にスコットランドで生まれ、飼育されていた「スージー」という名の猫の耳が立たず、その猫の子どもも耳が立たない個体が出現したため、そこから耳が立たない同士を交配させ、繁殖が進んだのだ。 しかし、1970年代イギリスの遺伝学者がスコティッシュフォールドに骨病変が頻繁に見られることを指摘。イギリスでは、1970年代からスコティッシュフォールドの登録を禁止し、今も継続されている。イギリス以外にも、オランダでは折れ耳のスコティッシュフォールドの繁殖禁止になり、ベルギーのフランドル地方では、繁殖と販売も禁止されている。 また、UFAW(動物福祉のための大学連盟)は、遺伝的動物福祉の問題点として、「スコティッシュフォールドの遺伝性骨軟骨異形成」をあげている。両方の親ともに折れ耳の猫はすべて骨軟骨異形成症を発症し、安楽死などを余儀なくされることも多いと記載している(※2)。 四肢が短く幅広く、尾が短くて柔軟性がなく、ひどく変形することがある。足を引きずり、手首(手根)と足首(足根)の関節が腫れ、歩き方が異常で、動いたりジャンプしたがらないこともある。症状が悪化すれば、足が不自由になり、歩けなくなることも……。しかも、「遺伝性骨軟骨異形成」は治る病気ではないので、発症したスコティッシュフォールドは、症状を緩和し、臓器に負担をかける鎮痛剤を一生飲み続けなければならない。放射線を当てる、外科手術などの治療が行われることもあるが、根本的な治療法は見つかっていないのが現状だ。 また、“スコ座り”と呼ばれる、後ろ足を前に投げ出したような一見、リラックスしすぎているかのような特徴的な座り方も、脚に体重をかけると痛いために、苦渋の策として現れている姿勢なのだ。 ※1:https://www.anicom-sompo.co.jp/news-release/2023/20240215/ ※2:https://www.ufaw.org.uk/cats/scottish-fold-osteochondrodysplasia