早まり続ける女の子の思春期、なぜ? 「早すぎる子」が抱える困難と親ができる対処法とは
内分泌かく乱物質などの影響
一方、日常的に使われる製品に含まれるフタル酸エステル類やビスフェノールといった内分泌かく乱物質が、こうした変化に関わっている可能性を示唆する研究も増えている。 「環境中に広く存在する多くの内分泌かく乱物質は、エストロゲンと似た作用を持っています」とソファー氏は言う。その結果、そうした化学物質に多くさらされることで、生殖機能の発達に変化が現れる。 たとえば、2023年に医学誌「BMC Medicine」に発表された論文では、女子の思春期早発症の原因のひとつとして、防汚剤や塗料、ワックス、つや出し剤、電子機器、食品包装材など多くの日用品に含まれる有機フッ素化合物(PFCsやPFASと総称される)にさらされることが挙げられている。 2023年に医学誌「Environmental Health Perspectives」に掲載された研究では、胎児から小児の時期に、居住環境で大気汚染の粒子状物質(PM)にさらされた量が多かった女子は、少なかった女子よりも生理が早く始まる傾向にあると結論づけている。 これらの要因が組み合わされることで、一部の女の子に思春期早発症が現れているのではないかとビロ氏は述べている。
心や体への影響
こうした生殖機能の発達の変化は、将来的に体や感情へ影響を及ぼす可能性がある。短期的には、「早く思春期を迎える女子は、速いスピードで成長し、その後、早めに成長が止まります」とビロ氏は言う。そうした子どもは、思春期が通常の時期に訪れた場合と比べて、最終的な身長が低くなることがある。 長期的に見ると、思春期が早めに訪れることにより、乳がんのリスクのほか、成人後の肥満のリスクも高まると、ビロ氏は指摘する。そのほか、高血圧、2型糖尿病、メタボリックシンドローム、コレステロール異常、心血管疾患になる可能性も高まるという。 「早期に思春期が始まった場合、その子の脳と体は、同じ年齢のほかの女の子よりも高い濃度の性ホルモンにさらされます」とチャク氏は言う。「そのため、ほかの子どもたちがあとから追いついてくる形になります」。そうした場合、同い年の子どもたちとのズレを感じるだけでなく、特定の精神衛生上の問題を抱えるリスクも高くなる。 「早く思春期を迎えると、心理的な移行が困難になる傾向にあります」とメンドル氏は言う。「早く成熟する子どもは、移行期を乗り切るうえで助けとなる社会的、感情的なリソースを手に入れる機会を逃してしまうのです」 研究からは、思春期早発症の女の子はうつ病、ストレス、不安のレベルが高く、適切なボディイメージを持つことが出来ず、感情の調整に多くの課題を抱えることがわかっている。 「思春期には、単なる生物学的な変化以上のことが起こります」とメンドル氏は言う。「外見が大人びてくるせいで、人々や社会との関係が変化します。周囲からの扱いが変わり、友人関係の悩みを抱えることもあります」 事実として、思春期早発症の女の子は、同級生からのいじめにあう可能性が高く、また心の準備ができていないうちから性的関心を向けられることもある。 「人は外見をもとに彼女たちの年齢を高く見積もります」とビロ氏は言う。「12歳の子が15歳のように見えることもありますが、彼女たちの感情と行動は12歳のそれなのです」 こうした外見の変化によって、教師や両親を含む大人たちが、彼女たちに実年齢よりも成熟した行動を期待してしまう場合もある。自分よりも年上の仲間と付き合い始めると、思春期を早めに迎えた女の子は、飲酒や性交渉などの危険な行動に及ぶ可能性があるとメンドル氏は言う。