早まり続ける女の子の思春期、なぜ? 「早すぎる子」が抱える困難と親ができる対処法とは
思春期が早まる原因
これはさまざまな要因が関係する問題だと、専門家は言う。まずひとつには、1970年代以降、肥満の児童の割合が増えていることが挙げられる。一部の研究では、女子の「思春期早発症」(通常の範囲より早く始まる思春期)と肥満との関わりが指摘されている。 「肥満はインスリン、インスリン様成長因子1(IGF-1)、レプチンといったさまざまなホルモンの血流への放出と関連しています」と、米コロンビア大学アービング医療センターの小児科准教授アビバ・ソファー氏は言う。 これらのホルモンは食欲や満腹感、体脂肪の蓄積などに影響を与えるほか、 思春期のタイミングを変化させる可能性がある。 また、肥満の女子は、通常体重の女子よりもエストラジオール(エストロゲンの一種)の濃度が高いことが研究でわかっており、これが乳房の発育や思春期の早期化に関わっていると推測される。 子どもたちの食事の質もまた、何らかの影響を及ぼしていると考えられる。特に果物や野菜が少なく、動物性タンパク質や高度に加工された食品が多い食事は、「エストロゲンなどの性ホルモンの濃度が高くなることと関連があります」と、米シンシナティ小児病院医療センターの小児科教授フランク・ビロ氏は指摘している。 事実、中国の研究者らが3種類の食事(伝統的な食事、不健康な食事、高タンパクの食事)を比較した研究では、スナック菓子、デザート、揚げ物、ソフトドリンクを多く含む「不健康な食事」の摂取は、女子の思春期早発症と関連があることが示された。 このほか、社会的または経済的な困難に関わる幼少期のつらい経験や、虐待などのストレスも、思春期早発症の要因となり得る。2023年に医学誌「Psychoneuroendocrinology」に発表された研究によると、幼少期のストレスレベルが高いと、思春期早発症のリスクが高くなるという。 「思春期が始まるタイミングは、ストレスの影響を受けやすいのです」と語るのは、米コーネル大学心理学部准教授ジェーン・メンドル氏だ。「思春期前の時期にストレスや逆境を経験した子どもは、思春期が早く始まる可能性が高くなります」 その原因を説明する仮説のひとつは、思春期の開始に影響を与える「視床下部-下垂体-副腎軸(HPA軸)」がストレス反応の制御にも関わっているため、というものだ。 また、コロナ禍において、画面を見ている時間の増加、社会的孤立、運動不足、健康的な食品を食べる機会の減少といったストレス要因が、米ニューヨーク市の女子で近年、思春期早発症が増えていることと関連している可能性を示唆する研究もある。