“過失運転”から“危険運転”へ 相次いだ訴因変更 遺族のこれまでの戦いと裁判への思い
栃木・群馬で相次いだ過失運転致死傷罪から危険運転致死傷罪への訴因変更。「危険運転への風が吹いている」訴因変更を求め活動続けていた遺族は、追い風を感じた。 罪名の違いが生む「故意」か「不注意」かの大きな差。遺族のこれまでの戦いとこれからの裁判への思いは。 (社会部 浅賀慧祐)
■故意か、不注意か 栃木・宇都宮市の160キロ追突事故の遺族のこれまでの“戦い”
事故が“不注意”で起きたか“故意”で起きたかには大きな「差」がある。 事故を起こしたドライバーへの罪のうち、過失運転致死傷罪は“不注意”で事故を起こした場合で法定刑の上限は7年。一方、危険運転致死傷罪は“故意”に事故を起こした場合で法定刑の上限が20年となる。 2023年2月、栃木県宇都宮市の国道で、時速およそ160キロで走行していた乗用車がバイクに追突する事故が起きた。この事故で、バイクに乗っていた佐々木一匡さん(63)が死亡。車を運転していた石田颯汰被告(21)は、“過失”運転致死の罪で起訴されていた。 しかし、一匡さんの妻・多恵子さんは当時から「法定速度を100キロ以上も上回る速度で追突したにもかかわらず危険運転にあたらないという判断はおかしい」などとして、宇都宮地検に危険運転致死罪への訴因変更を求める要望書を提出したほか、街頭やインターネットなどで署名活動を行ってきた。 こうした中、事故からおよそ1年半がたった2024年10月に動きが。 宇都宮地検は裁判所に対し、起訴内容を過失運転致死の罪からより法定刑の重い危険運転致死の罪に変更する請求を行ったのだ。裁判はすでに一度“過失運転”で行われていたが、裁判所は請求を認め、石田被告の裁判はやり直しとなった。 一匡さんの妻・多恵子さん 「できたよ、やっとできたよ遅くなってごめんねと(一匡さんに)報告しました」「私が一匡さんのところにいったときは『よくやった』と褒めてほしい」
■「危険運転への風が吹いている」相次いだ訴因変更に感じた追い風
訴因変更の動きは偶然にも続いた。 宇都宮の訴因変更の翌週、群馬県伊勢崎市で家族3人が死亡した事故でも、被告の起訴内容が過失運転致死傷罪から危険運転致死傷罪へ訴因変更されたのだ。 この事故は、2024年のゴールデンウィークに飲酒運転をしていた鈴木吾郎被告のトラックが、レジャー施設からの帰宅途中だった車に衝突し、塚越湊斗ちゃん(2)、父親の寛人さん(26)、祖父の正宏さん(53)家族3人が死亡したものだった。 一匡さんの妻・多恵子さん 「たまたまでも良い流れだなと。危険運転への風が吹いているっていうのかな、後押しをしてくれる風が吹いている(と思った)」 このとき、訴因変更を求める署名活動をしていた伊勢崎の事故の遺族を手伝うため、群馬県を訪れていた多恵子さんは、遺族と一緒に喜びをわかちあったという。 タイミングは偶然だったかもしれないが、危険運転致死傷罪をめぐる動きに確かに感じた追い風。