英国の富裕層、夏の総選挙に慌てる-資産守るため急ぎ行動
(ブルームバーグ): 外国の億万長者からロンドンの金融街シティーのバンカーまで、英国の富裕層はスナク首相が夏の総選挙を発表して国民を驚かせた後、資産の避難を急いでいる。
富裕層や資産アドバイザーへのインタビューによると、一部の富裕層は投資を現金化したり、すぐに引き上げられそうな各種料金を支払ったり、英国を離れたりしている。
与党保守党と野党労働党はともに、英国に居住する外国人富裕層(ノン・ドム)に対する優遇税制の廃止を公約に掲げている。労働党のスターマー党首は、富裕層への課税をさらに強化する方針を打ち出しており、世論調査では同党が20ポイント以上リードしている。
ポーランドを拠点とする超富裕層向け税務・移民アドバイザー、デービッド・レスペランス氏はスナク首相が7月4日の総選挙を決めたことについて、「それまでためらっていた顧客がパニックモードに入った」と述べ、首相は 「選挙の手りゅう弾のピンを抜いた 」と指摘した。
英国は昨年、正味で3200人の富裕層を失ったと、市民権アドバイザリー会社のヘンリー・アンド・パートナーズが見積もった。欧州で最大の流出であり、2022年の2倍だという。法的・政治的に安定しているという英国の評判は、欧州連合(EU)離脱の混乱と、2016年以降に5人という保守党政権の首相交代によって揺らいでいる。
英国はモナコ、ドバイ、スイスといった富裕層に人気のある地域に後れを取っただけでなく、富裕層の外国人を誘致するプログラムを展開したイタリアやギリシャといった欧州諸国とも競争しなければならなかった。英国は22年にいわゆるゴールデンビザ・プログラムを廃止した。
世界的な法律事務所チャールズ・ラッセル・スピーチリスのパートナー、ドミニク・ローランス氏(ロンドン在住)はノン・ドムの優遇廃止について、「もし発表されたとおりに変更が進めば、重大で、しかも完全に回避可能な失策だ」と指摘する。