英国の富裕層、夏の総選挙に慌てる-資産守るため急ぎ行動
労働党はまた、プライベートエクイティー専門家や私立学校の学費への課税も追加しようとしている。ノン・ドムを巡る提案の一環として、信託構造で保有される海外資産に対する相続税免除の撤廃も目指している。
ノン・ドムは海外での所得について英国で課税されない。スナク首相の妻のアクシャタ・ムルティ氏もこのステータスの恩恵を受けていることが22年に明らかになった。メディアを騒がせた後、ムルティ氏はインドのソフトウエア大手インフォシス社から得た収入の一部に対して英国で税を支払うことにした。
あるシティーの法律事務所では、ここ数カ月にノン・ドム関連の変更に関連した問い合わせを3ダース以上受けたという。億万長者や百万長者からの相談だと、事情に詳しい関係者が語っている。そのうちの1人はスイスに移住し、もう1人はイタリアへの移住を準備しているという。
ロンドン在住の英国外出身の元ヘッジファンド運用者は、両主要政党の政治的方向性への不満もあり、他の欧州諸国に移ろうとしている。また、不動産投資を行っている超富裕な英国人も、英国でのフルタイム生活から、年に3カ月だけ英国で過ごし、残りをドバイやモナコなどの低税率地域に住む方法に切り替えることを検討している。
世界的な法律事務所オジェで超富裕層向けの税務・信託アドバイザーを務めるサイモン・ゴールドリング氏は、海外移住を希望する英居住者の実例をいくつか知っているが、そのほとんどが戦後最高水準の税金の高さに不満を持つ英国人だという。
「彼らはうんざりしている」と、自身も昨年英国からドバイに転居した同氏は述べた。
原題:Britain’s Rich Race to Protect Their Wealth From Election Hit(抜粋)
--取材協力:Alice Kantor、John Stepek、Shona Ghosh、Tara Patel、Devon Pendleton、Daniel Cancel.
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Benjamin Stupples, Charlie Wells