「中宮の部屋から響き渡る女性の叫び声」。紫式部たちが夜中に目撃した“まさかの光景”
今年の大河ドラマ『光る君へ』は、紫式部が主人公。主役を吉高由里子さんが務めています。今回は大晦日の宮中で起きた恐ろしい出来事について解説します。 著者フォローをすると、連載の新しい記事が公開されたときにお知らせメールが届きます。 【写真】中宮の部屋から女性の叫び声。恐る恐る部屋へと向かう紫式部達。写真は京都御所 ■大晦日の宮中では鬼や疫病払いが行われた 一条天皇の中宮・彰子の敦成親王出産など、喜ばしいことがあった寛弘5年(1008年)もいよいよ年の瀬。宮中では、追儺(ついな)が行われていました。
追儺(鬼やらいとも言う)とは、悪い鬼を追い払い、疫病を払う、といった新年を迎えるための儀式の1つです。もともとは中国の宮中で行われていたものが、日本に伝来してきたのでした(7~8世紀の文武天皇の頃に伝来との説も)。現在、日本各地で行われている節分の豆まきの前身だと言われています。 1008年の大晦日の夜に行われた、追儺はとても早く終わってしまいました。 中宮に仕える紫式部もこの行事を見物していたようですが、早く終幕してしまったので、局(女房の私室)に戻り、お歯黒を付けたり、みだしなみを整えたりして、くつろいでいました。そこに紫式部の上司のような存在であった弁の内侍がやってきます。紫式部に一言二言話しかけると、弁の内侍は横になりました。静かな大晦日の夜。このままこうして新年を迎えるものと、誰もが考えていたことでしょう。
するとそこに、静寂を破る大声や叫び声が突然響いてくるのです。それも中宮の部屋のほうからでした。 紫式部は驚き、すでに横になっている弁の内侍を起こそうとしますが、眠りについているようで、すぐに起きてくれません。 そうこうしている間に、中宮の部屋のほうからは、人が泣き叫ぶ声がまた聞こえてきました。(いったい、何が起こっているの……)紫式部は不安でいっぱいだったことでしょう。(火事では? )と最初は思ったようですが、どうやらそうではないようです。