シラスの水揚げ量が平年の約3分の1に…“いつもとれる魚がとれない”歴史的不漁の背景に「黒潮大蛇行」【高知発】
市場に並ぶ魚に異変
値上げの波はスーパーにも及んでいる。高知市のサニーマート山手店では、シラスの不漁により「ちりめんじゃこ」が2022年に比べ15~20%値上がりしている。客からは「おひたしとかにじゃこを入れていたが、今は入れない。高い」という声が聞かれた。 水産バイヤー歴30年のサニーマート水産担当・山中道春さんは「ここまで水揚げがないのは過去にない。ちりめんじゃこが安定して毎日届けられるか、非常に見えにくい状態になっていて困っている」と語る。 シラスだけでなく、室戸市のキンメダイも歴史的な不漁に。さらに、高知沖でとれる天然ブリの漁獲量も減り店頭には県外産が並んでいる。一方で、例年より仕入れが増え、日によってはお買い得になるという魚がある。山中さんは「キハダマグロがことし、例年より水揚げが多い。主に和歌山とか高知の土佐沖でとれるキハダマグロを販売している」と話した。 バイヤーの山中さんは近年、市場に並ぶ魚に異変を感じ取っていた。「例年の入荷データが参考にならない。旬の時期もずれているし、いつどんなタイミングでどんな魚が揚がるか非常に読みづらくなっている。その時によって、逆に普段揚がらない魚が揚がる」というのだ。
海の異変の背景に「黒潮大蛇行」
県内4つの漁港におけるシラスの水揚げ量を見ると、2015年は1327トンあり、以降、だいたい1000トンを超えて安定的に推移。しかし、2022年に466トンと急激に減少し、2023年も不漁に。2024年は11月末の時点で299トンと、過去10年で最も少なくなる見込みだ。 この原因について県水産試験場に聞くと「黒潮大蛇行」というキーワードが浮かび上がってきた。日本の南には「暖流黒潮」が流れている。シラスの親・イワシが三陸沖から黒潮の内側を通って房総半島、紀伊半島沖を通過し高知沖で産卵していた。しかし2017年から海の環境に変化が起き、黒潮のルートが大きく変わるようになった。これを「黒潮大蛇行」と呼ぶ。 黒潮がこれまでのイワシの通り道をふさいでしまい、イワシは関東の沖合で産卵して三陸沖に戻るようになった。このため、これまで高知沖で産卵していたのができなくなってシラスが減った。 また、高知沖ではシラスだけでなくキンメダイやブリも不漁となっているが「黒潮大蛇行」により、食物連鎖・餌場・魚の回遊ルートが大きく変わった。これが様々な漁に影響を与えていて、いつもとれる魚がとれなかったり逆にとれなかった魚がいきなり豊漁になったりといった現象が全国で起きている。 「黒潮大蛇行」は珍しい現象ではないが、2017年から7年余り続き、これは観測史上最長となっている。「黒潮大蛇行」は年明け以降も続き、県水産試験場は全国的に漁の異変がしばらく続くとみている。 取材:玉井新平(高知さんさんテレビアナウンサー)
高知さんさんテレビ