F1豪州GP急転中止の裏側…再開遅れれば損失は数百億円
開催権料を巡って両者がどのような結論に至ったのかは明らかにされていないが、イベント中止に伴う痛みはそれだけではない。開催権料とともにF1側の収入の大きな柱となっているテレビ放映権料も、今後返金の手続きが行われるだろう。さらにオーストラリアGP中止発表の直後には、第2戦バーレーンGPと第3戦ベトナムGPの延期が発表された。すでに第4戦中国GPも延期が決定しており、これでF1は開幕から4戦が中止または延期という異常な状況となっている。 さらに3月19日には、第5戦オランダGPと第6戦スペインGPの延期、第7戦モナコGPの中止が決定した。 こうした状況に、F1側は夏休み期間中に2週間予定していたファクトリーの閉鎖を3月と4月に変更し、14日間から21日間に延長することで、開催できなかったグランプリを夏休みとその前後に組み入れる構えを見せている。そうなれば全22戦のうち3、4戦は中止となるだろうが、シーズンを延長して18~19戦は開催できる見込みだ。 しかし、それはあくまで新型コロナ・ショックが5月末までに落ち着けばの話。もし、現在のパンデミックが6月になっても終息しなければ、話は根底から覆る。そして、その場合のF1側の損失は数百億円に膨れ上がる。F1側の収益が減れば、各チームに分配される賞金の額も減る。自動車メーカーがチームオーナーを務めるメルセデス、フェラーリ、ルノー以外のプライベートチームは、スポンサーマネーとF1からの分配金が主な収入源であるため、グランプリ数の減少はチーム存続の死活問題になりかねない。 また、今回の新型コロナウイルス感染拡大は、リーマン・ショックを超える経済危機を招くと予測する者もいる。もし、そうなれば、自動車メーカーがオーナーを務める、いわゆるワークスチームでさえも状況は厳しくなるだろう。 前代未聞の開幕戦中止を決定したF1は、いまもなお見えないトンネルの中で出口を探し求め、彷徨っている。 (文責・尾張正博/モータージャーナリスト)