コショウ相場が急騰 世界的な需給バランスの乱れが影響
コショウ相場が急騰している。コショウの原料価格はコロナ禍の20年に底値をつけて以来、徐々に相場は上昇していたが、今年7月から急騰気配となり、06年以降で最高水準に近い価格にまで上昇。世界最大のコショウ産地であるベトナムの減産が確定したことに加え、一大産地のブラジルでも減産が確定的な状況となり、供給量が減少する。一方で中国を中心に需要は旺盛となっており、世界的な需給バランスの乱れが長期的に続く見込みだ。 【グラフを見る】コショウ急騰 乱れる需給バランス
長期的な価格上昇の懸念も
有力スパイス専業メーカーによると、6月まで1t当たり5000ドルだった相場が7月には8000ドルに急騰した。8月に入り相場はやや落ち着きを取り戻したといわれているが、長期的な上昇は避けられない状況だ。 ベトナムのコショウの収穫は2~3月に終了し、前年比で約15%減の15万8000tほどとなった。価格下落による作付面積減少とコショウの樹齢が高齢化したことが要因。ブラジル産も一部の産地で天候不順による減産がほぼ確実な状況だ。インド産やインドネシア産は、堅調な生産量が見込まれるものの、ベトナムとブラジルの減産をカバーするには至らない。 加えて、コロナ禍からの世界的な経済回復による需要の拡大がコショウ相場をさらに引き上げている。中国など経済成長を続ける国々ではステーキなどの洋食化が進み、コショウの需要は高まっている。コロナ以前からその傾向は見られたが、コロナ禍からの回復が鮮明となった今年初め以降、中国を中心とした買いが増えており、今後はさらにその動きが本格化していく。 さらに輸入国である日本にとって厳しいのが為替の状況だ。直近では円高に振れているものの、円安基調によりドルベースに比べて円貨ベースでは昨年1月と比べると約7%上昇している。原料価格の急騰に加え、為替の影響が日本のメーカーにとって大きなコスト増要因となる。 コショウは植え付けから実の収穫に至るまで約3年かかる。生産国の減産傾向をつかんでいた日本のメーカーは、基本的には在庫を積み増してきた。このため、直近でこの高騰による影響が出ることは考えにくい。ただし、過去に例を見ない短期間での高騰に、専業メーカーは警戒感を強めている。 今後については、この急騰で栽培面積の世界的な拡大が見込まれるものの、その収穫までの期間を考慮すると長期的な相場上昇予測が強い。加えて、世界的な需要の増加に供給が追いつかず楽観的な相場予測はしにくい状況だ。
日本食糧新聞社