木のぬくもり広がる未来 進化する木造建築 テックテック
半年後に開幕が迫る大阪・関西万博。そのシンボルとなるのが世界最大級の木造建築「大屋根リング」だ。日本は国土の3分の2を樹木に覆われた〝森林大国〟。その森林から得られる木材を利用した建築技術に注目が集まる。耐火集成材の実験施設など、次世代の木造建築を担う現場を訪ねた。 大手ゼネコンの竹中工務店(大阪市中央区)が手がけるのが「燃エンウッドⓇ」と名付けられた耐火集成材。3層からなる内部は、木の部分が連続しているのが特徴という。火災に対する安全性は、千葉県にある技術研究所の耐火実験棟で検証を繰り返した。 研究主任の齋藤真美さん(33)は「耐火の試験は実際にやってみないとわからないところがある」と話す。「節があったり自然のものなのでばらつきがあって予測が難しいんです」。 実験は耐火炉内を1000度超に熱し、素材の厚みを何度も調整しながら行った。1時間の耐火から始まり、現在は3時間の火炎に耐える性能を持ち、高層ビルの建築に用いられるようになった。 森林資源と地域経済の持続可能な好循環を目指して、伐(き)る・植えるに加えて中高層建物の木造化や地域産業の創出など森林の有効活用を掲げる。 木造・木質建築推進本部長の花井厚周(あつなり)さん(56)は「カーボンニュートラルに取り組む企業からは、木造でのCO2削減の効果や費用を聞かれるようになりました。将来は再利用できる木材も」と、未来を見据える。 木造の小学校を訪ねて富山県魚津市に向かった。平成27年の建築基準法改正により上階への延焼防止措置を講じることで、木造3階建ての校舎が建設できるようになった。市立星の杜小学校は魚津市産の木材を97%使用した全国初の木造3階建て校舎を持つ。 同小6年の宮村菜七子さんは「校門を抜けて校舎に着くと、良い香りがして朝からいい気分になれます」と話す。廊下から様子がわかるオープンなつくりになっている教室は、屋根を支える骨組みや柱に目が行く。 書籍が並ぶメディアセンターでは、木の階段に腰かけた児童が本を読む。「落ち着く感じがして、勉強もしやすいです」と6年の谷川琴海さん。