田家秀樹が語る、吉田拓郎が今伝えたい選曲を収録したセレクション・アルバム
音楽評論家・田家秀樹が毎月一つのテーマを設定し毎週放送してきた「J-POP LEGEND FORUM」が10年目を迎えた2023年4月、「J-POP LEGEND CAFE」として生まれ変わりリスタート。1カ月1特集という従来のスタイルに捕らわれず自由な特集形式で表舞台だけでなく舞台裏や市井の存在までさまざまな日本の音楽界の伝説的な存在に迫る。 【画像】吉田拓郎、1970年代のライブアルバム 2024年6月の特集は、「吉田拓郎とROGUE」。前半の2週は吉田拓郎のアルバム『Another Side Of Takuro 25』、後半は先月発売になったROGUEの6枚組ボックスセット『ALL TIME SELECTION ROGUE 60』を渡り掘り下げていく。 田家:こんばんは。FM COCOLO「J-POP LEGEND CAFE」マスター・田家秀樹です。今お聴きいただいたのは吉田拓郎さんの「どうしてこんなに悲しいんだろう」。6月12日に発売になります。拓郎さんのアルバム『Another Side Of Takuro 25』からお聴きいただいております。オリジナルは1971年発売、2枚目のアルバム『人間なんて』の中の曲でした。今日の1曲目はこの曲です。今日、曲紹介しないで先に曲を聴いていただこうと思っているんですね。その方が新鮮に受け止められるのではないかということで、いきなり曲からいきます。 どうしてこんなに悲しいんだろう / 吉田拓郎 『Another Side Of Takuro 25』は2枚組で全26曲収められてます。拓郎さんのデビューは1970年。そのときはエレックレコードでした。その後、1972年からは当時のCBSソニー。1975年からは自分たちが設立したレコード会社フォーライフ・レコードから出て、2001年からはテイチク、2009年からエイベックス。そうやって時代によってレコード会社が変わって活動してきているんですけども、このアルバムはエレック、ソニー、フォーライフ、年号で言うと1970年から1999年。年齢で言うと、24歳から53歳。思春期、青春期、大人になっていくという過程がそのまま収められている、そういう作品ですね。 拓郎さんのベスト・アルバムは本当にたくさん出ていて、たぶん30枚以上は出ているでしょうね。今までのそういうベスト・アルバムと大きな違いが2つありまして、1つは全曲彼が選んでいる。レコード会社が勝手に選んだんだよというアルバムではないんですね。そして、もう1つは全曲のライナーノーツを彼が自分で書いているんですね。これは大きいですね。その1曲がこの「どうしてこんなに悲しいんだろう」だったんです。デビュー・アルバムは1970年の『青春の詩』で、その中には「イメージの詩」とか「今日までそして明日から」とか初期の代表曲があるんですけども、そういうのを選ばずに「どうしてこんなに悲しいんだろう」から始めている、いろいろな意図が伺えますね。今伝えたい曲、言いたいことがあっての選曲なんだということがわかります。 そして、「どうしてこんなに悲しいんだろう」のライナーノーツには加藤和彦さんとの思い出が書かれているんですよ。これで始めるのはそういうことだったんだなというのが、読んでわかります。書かれているのは、ラジオ関東という放送局が昔ありました。今はラジオニッポンと言っておりますが、関東地方しか流れなかった。拓郎さんの初めてのレギュラー番組はそこだったんですけど、そこのスタジオで会った。その日のファッションが見たことがない派手なもので、これがロンドン帰りか、スターのオーラが満開だったというようなことが書かれていますね。 このアルバム『人間なんて』のギターは加藤さんなんですけど、ライナーノーツの中では拓郎さんがドノヴァンの「カラーズ」という曲がありまして、シングル盤はハモニカホルダーとギターを抱えているドノヴァンが写っている曲なんですけども、あの曲のギターが好きだと言ったら数週間後に加藤さんがエレックレコードに君の好きなギターサウンドはこれだと言って、ギブソンを持ってきてくれた。涙が出るほどうれしかったということが書かれております。今週はこのアルバムのDisc1、13曲の中から8曲をご紹介しようと思うのですが、曲紹介は曲の後にしようと思います。Disc1の2曲目です。