【毎日書評】質問力を高めよ。なぜ「問う力」が人生に重要な意味を持つのか?
多様性が重んじられ、思いもよらないことで「ハラスメントだ」といわれてしまったりすることも珍しくない現代において、人と人とのコミュニケーションはどんどん難しくなっています。しかもその結果、コミュニケーション能力にはいままで以上に大きな格差が生まれてもいます。 そこで『科学的に正しい脳を活かす「問いのコツ」 結果を出す人はどんな質問をしているのか?』(徳吉陽河 著、総合法令出版)の著者は本書を通じ、そんな悩みを「質問力」によって解決する方法を明らかにしているのです。 しかし、なぜ質問力なのでしょうか? 質問力が高まると、考える力が身につき、具体的な対話につながり、相手を思いやりながらコミュニケーションを取ることができます。 そして、より良い人間関係を構築することができ、他の人に問いかけることで、自分一人では得ることができなかった知識や体験などを学ぶチャンスが増えます。(「はじめに」より) しかも質問力は、他者へ向けたことばだけに限らないのだとか。「セルフクエスチョン」あるいは「セルフトーク」といって、質問を自分に向けて行うことで自己理解を深めることができるというのです。そのため必然的に思考力と洞察力が高まり、自分に変化をもたらすことができるようです。 実際、これまで質問力を身につけた人の中には、コミュニケーション能力が向上し、勤めていた企業でリーダー的存在に抜擢された人、社長補佐になった人、独立開業して成功を収めている人もいます。(「はじめに」より) つまり質問力を高めることで、人生をより豊かにできるということ。その点を踏まえたうえで、きょうは質問力とリーダーシップとの関係に言及した第3章「結果を出すための『問う力』に注目してみたいと思います。
「問う」で導く力を高める
「自分はリーダーに向いていない」とおっしゃる方がいますが、いまリーダーに向いていないと感じていても心配はいらないと著者は述べています。なぜなら、リーダーシップは質問で高めることができるから。 質問でリーダーシップを高めるために最も重要なのは、「自分にとって今、何が大切なのか」を自分自身に問うことです。 その答えを基盤に、まずは自分に対してリーダーシップを発揮していくのです。それができれば、部下の意見も尊重できるようになっていきます。(134ページより) リーダーには「カリスマがある人」「指示・命令する人」「答えを出す人」というようなイメージがありますが、著者いわく、それは過去の話。あくまでも現代のリーダーは、「相手自身が主体的に成長できるように働きかけていく存在」だというのです。現代では、相手の人生や仕事を最適な状態に導くことが大切なのでしょう。いいかえれば、すべての人にリーダーシップが必要とされているのかもしれません。 なお、「自分で考えてね」と突き放すような上司もいますが、それはただの放置であり、リーダーのあるべき姿ではないと著者は断言してもいます。いうまでもなく、リーダーであれば必要に応じて手を差し伸べるべき。いかに相手の成長につながるか、どうしたら自分にとっても相手にとってもよい未来につながるかを考えつつ、職場全体を俯瞰して行動していくことが求められるわけです。(134ページより)