8年ぶりのW杯予選に挑む“全く文脈の違う代表チーム”フットサル日本代表「Fリーグや下部組織の組織力を証明したい」
さまざまな環境から生まれ出る若き選手たち
Fリーグができてから、育成年代から選手が育つ環境も作られてきた。フットサルが日本で流行り始めた頃は、サッカー上がりの選手がフットサルに転向することが一般的だった。現在もそうした流れはあるものの、育成年代からフットサルを専門で取り組む選手も増えてきている。2014年にJFA第1回U-18フットサル選手権大会が始まり、ユース年代の選手が日本一を目指せる大会ができたことも大きい。サッカーの強豪校でこの大会に出場した選手が、高校卒業後にフットサルに転向する例もある。現在の日本代表の石田健太郎は、帝京長岡高校時代にJFA第2回U-18フットサル選手権大会に出場し、大学は全国有数のフットサルの強豪である多摩大学に進学し、在学中から現在キャプテンを務めるバルドラール浦安でプレーするようになった。 また、2024年4月1日からはFリーグに所属する各クラブはU-18チームを保有することが義務化された。すでにFリーグの下部組織出身の選手たちがトップチームでプレーするようになっているが、今回のフットサル日本代表に選出されているペスカドーラ町田の山中翔斗も、町田の下部組織育ちだ。 甲斐稜人と金澤空の2人は、高校年代でJリーグのFC町田ゼルビアユースでチームメイトだった。だが、それ以前には甲斐はペスカドーラ町田の下部組織で、金澤も府中アスレティックFC(現立川アスレティックFC)のスクールで、それぞれフットサルをプレーした経験があった。幼少期に専門的なフットサルの指導を受けていた選手がサッカーチームを経てから再びフットサルをプレーすることで、より順応が早くできるようになっている。 早い年代から多くの選手がフットサルを専門的にプレーしている成果は、国際大会でも出ている。これまで2017年、2019年と2回AFC U-20フットサル選手権が開催されたが、日本はイランで開催された第2回大会で優勝を果たしている。準決勝ではイラン、決勝ではアフガニスタンと対戦して、圧倒的なアウェーの環境だったものの優勝を勝ち取った。この時のメンバーからは山田凱斗が今回の日本代表に選出されているが、その山田は現在スペイン1部インテル・モビスタという世界的な名門チームに在籍して主力として活躍。日本人選手の個の力が上がっていることを示す選手の代表例となっている。 スペインの超名門でプレーするもう一人の選手として、原田快がいる。原田は父も元フットサル日本代表の原田健司氏であり、その父が指導するガット2008というチームで技を磨いた。9歳でブラジル留学、10歳でスペイン留学と幼い頃から海外でプレーした彼は、スペインで開催された大会に出場した際に現地で注目される。そして、スペイン1部バルセロナからのオファーを受けて、サッカー日本代表の久保建英も過ごしたラ・マシア(バルセロナの下部組織の総称。育成年代の選手寮の意味も兼ねる)で生活し、今季からはトップチームでも出場を果たしている。バルセロナで日本人選手がプレーするのは、全競技を通じて原田が初ということだ。前回大会の優勝メンバーの一員である原田だが、今大会はFIFAデイズ外での開催となっているため、日本代表に招集することはできなかった。逆に言えば、それだけ原田がバルセロナでも重要視されているということだろう。