8年ぶりのW杯予選に挑む“全く文脈の違う代表チーム”フットサル日本代表「Fリーグや下部組織の組織力を証明したい」
時代の変遷を感じさせる監督、コーチ、そして選手
現在のフットサル日本代表も、いくつかの点で8年前と似た状況にある。一つは、ディフェンディングチャンピオンとして、アジア杯に臨むことだ。フットサル日本代表は2022年にクウェートで行われたアジア杯で8年ぶり4度目の優勝を成し遂げている。 また、2016年当時は直前の壮行試合でコロンビア代表に2連勝(3-2、4-2)するなど、世界の強豪とも渡り合えていた。現在のチームも2016年のフットサルW杯王者のアルゼンチンに昨年12月に2引き分け(1-1、1-1)し、現在、圧倒的な強さを誇る2021年のフットサルW杯王者のポルトガルとも接戦(1-4、1-2)を繰り広げた。 8年前の敗因の一つに「史上最強」という言葉が強く意識され過ぎてしまい、慢心を招いたことが挙げられた。その反省を踏まえて、あえてその言葉は使わないが、フットサル日本代表チームは間違いなく右肩上がりに成長を続けている。 そのチームを率いているのは、木暮賢一郎監督だ。過去にフットサルを見ていた人なら、ピンとくる名前だろう。現役時代にはフットサル日本代表選手として2000年から2012年まで活躍。セルジオ・サッポ監督時代には絶対的なエースとして君臨し、ミゲル・ロドリゴ監督時代には小宮山友祐(現バルドラール浦安監督)とともにチームのキャプテンも務めた。3度のフットサルW杯出場を果たし、2006年にはAFC年間最優秀フットサル選手賞を受賞するなど、日本フットサル界が最も輝いていた時の中心的存在だ。 2013年に現役を引退してからは、指導者に転身。指導者としても成功を収めており、2017-18シーズンにはシュライカー大阪の監督としてFリーグ制覇を成し遂げている。2007年に開幕をしたFリーグは、これまで17シーズンを消化してきたが、そのうちの16度は名古屋オーシャンズが優勝している。つまり木暮は監督として唯一、名古屋以外での優勝経験者であり、日本人指導者では唯一のFリーグタイトル保持者でもあるのだ。 往年の名プレーヤーが、名監督になっているということに加え、今回のアジア杯を戦うフットサル日本代表には、時代の変遷を感じさせる選手がもう一人いる。名古屋に所属している甲斐稜人だ。 「フットサル」「甲斐」という2つのキーワードでわかった人もいるだろう。日本フットサル界を黎明期から支え、魅了してきたカスカヴェウ(現ペスカドーラ町田)の創始者であり、日本フットサル界のカリスマである甲斐修侍の息子だ。自身は日本代表止まりでキャップを刻むことはなかったが、同じレフティの息子は、すでに日本代表デビューも果たしている。そして今回、22歳で初めてAFCの公式大会に出場することとなった。 「ファイルフォックスの中心選手である木暮が日本代表の監督になり、カスカヴェウの甲斐修侍の息子とともにアジアカップに出場する」という、オールドファン垂涎の出来事が現実となっているのだ。 ちなみに現在のフットサル日本代表のコーチングスタッフには、バルドラール浦安で活躍し、2004年のフットサルW杯(当時は世界選手権)にも抜擢された「シンデレラボーイ」の高橋健介もコーチとして参画している。現役時代に日本代表としての経験や海外での経験も豊富に積んでいるコーチングスタッフの存在は、選手の指導に大いにプラスとなっている。