「青いラベル」の焼き肉のたれ、パッケージを変えると売り上げ8倍 パッケージマーケティングの力とは
◆パッケージマーケティング業への取り組み
----その後の取り組みについて教えてください。 2011年の東日本大震災で、パッケージの袋が不足して商品が出荷できない事態が広がりました。 そのとき、初めてパッケージの価値に気づきました。 パッケージは、ただの入れ物ではなく、「安心安全」な出荷を担保し、しかも「販売促進」するためにある。 「販売促進」に力を入れ、高付加価値のパッケージを届けようと考えました。 手始めに、自分でブログを書いてみたり、会社主催でパッケージマーケティングセミナーを開いてみたりしました。 ブログの記事が溜まると、「本を書いたらどうか」と勧めてくれる人がいて、「講演依頼が増えるかもしれない」と思い、2013年に本を出版しました。 ----発信活動のほかに、注力したことは何でしょうか? 当時は、袋を注文したらメーカーがデザインも手がけるのが慣習でした。 そこにデザイン代金は発生せず、マーケティングやブランディングという観点もないため、いいデザインは少なかったのです。 きちんとしたデザイナーを入れるには、パッケージを発注する企業からデザイン代ももらう必要があります。 慣習にないことなので、難関と思われましたが、本を出したタイミングで、思い切ってデザイン代をもらうことにしました。 はじめてデザイン代をもらった案件は、当時74歳の女性が手づくりし、過去30年間売れていなかった焼肉のタレです。 青を基調としたラベルだったのですが、青は食欲が減退する色。 そこで、「なぜ、このタレを売ろうと思いついたのですか」「味の強みは何ですか」とヒアリングすると、「だって、すごくおいしいタレなんです。家で焼肉をすると、孫が『今夜は焼肉じゃ』と喜ぶんですよ」とのこと。 「お~い、お茶」のように、消費者に呼びかけるネーミングは訴求力が強いと考え、商品名を「今夜は焼肉じゃ」に変えてパッケージデザインもガラッと変えたら、売り上げが8倍になったのです。 以降、数々の商品のパッケージを手がけさせていただきましたが、「パッケージを変えたら売り上げが上がった」という嬉しい声を多数いただいています。 「パッケージを売る」のではなく、パッケージによって市場を開拓し、ブランドを確立する。 これを「パッケージマーケティング」と定義し、経営の軸に据えています。 ----「パッケージマーケティング」を進めるようになり、社内の雰囲気は変わりましたか? 社内に1人デザイナーがいますが、私のブログを読んだのがきっかけで、一緒に仕事をするようになり、入社してくれました。 彼は、かつて顧客の注文通りのチラシを作る会社にいたので、弊社のように自ら提案ができる仕事に面白さを感じたようです。 2020年には、私の本を読んで興味を持ったという、大学新卒の女性も入社してくれました。 社員の入れ替わりもあり、なかなかいい社風になっていると思います。