地下鉄スト収束も今なお混乱するW杯直前のブラジル
「準備がちょっと遅れ気味だけど、何とかギリギリ間に合わせるよ。俺たちって、いつもそうだから」というのが、ブラジル人の口癖だ。しかし、当のブラジル人も、ここまで本当に「ギリギリ」になるとは思っていなかったのではないか。 6月12日にブラジル対クロアチアの開幕戦が行なわれるサンパウロ・アレーナ(通称「イタケロン・スタジアム」)では、消防署の使用許可が下りず、1日の“最終テスト”の試合でゴール裏二階席スタンドに客を入れることができなかった。このため、収容人員6万8千人であるにもかかわらず、観衆は半分強の3万7千人。6日になってようやく消防署が使用許可を出し、開幕戦で全席に客を入れられることになった。全くの綱渡りである。 IT設備の設置がひどく遅れており、スタジアム内でインターネットや携帯が使えないかもしれない。また、本来なら屋根の一部をガラスで覆うはずだったが、開幕までに作業が完了しないことが確実となり、すでに工事そのものが放棄された。雨が降れば、ゴール裏の観客の大半がずぶ濡れになる。その他のスタジアムは、この原稿を書いている10日の時点で、クリチーバ会場、ポルトアレグレ会場のスタンドの椅子の設置作業が完了していない。残り数日間で、ドタバタとやっつけるつもりのようだ。 スタジアム建設の遅れよりずっと深刻なのが、ワールドカップ反対デモとストライキだ。デモは、各開催地で試合の先日か当日に発生するとみられている。デモ隊の一部はワールドカップの取材や観戦のためにやってきた外国人メディアやサポーターも「FIFAの一味」とみなし、襲撃する可能性がある。 各種交通機関のストライキも、非常に厄介だ。6月5日以来、サンパウロでは地下鉄のストライキが猛威を振るった。5路線のうち3路線が部分的にしか動かず、やむなく市民がバスや車で移動しようとして地上交通が完全にマヒ。8日に裁判所がストを違法とする判決を下し、9日午後からやっと収束へ向かった。しかし、労使交渉が妥結したわけではないから、再発するかもしれない。また、リオデジャネイロなど他都市でも、地下鉄、バスなどの交通ストが起こる可能性がある。