いじめの「グレーゾーン」をどう指導すべきか
こう対処しよう!
まずB、次にAに個別に話を聞き、その結果をいじめ対策委員会にて報告、指導方針について協議。 Aには、Bが傷ついたことを伝え、他の言い方等がないか一緒に考える。 Bには、Aの思いや指導したことを伝え、今後気になったことがあったら話すように伝える。
法律的には“いじめ”
さて、今月から連載をさせていただくことになりました、弁護士の鬼澤です。現場でも役立ち、しかも、試験にも役立つ法律知識を漫画と一緒にお届けしたいと思います。 今回のテーマは「いじめ」です。さて、漫画の事例、みなさん、AさんのBさんに対する発言は「いじめ」だと思いましたか? 直観的に「これはいじめではない」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。 しかし、これは法律的には「いじめ」と判断しなければなりません。法律上、いじめの定義には、大きく3つの要件があります(いじめ防止対策推進法第2条第1項)。①一定の人的関係があること、②心理的又は物理的影響を与える行為であること、③当該行為の対象となった児童が身心の苦痛を感じていること、の3つです。 今回の事例では、AとBは同じ学校に在籍しており「一定の人的関係」は認められます。また、AはBに対して「Xが嫌いなら来なくていいよ」という発言をしており、これは「心理的(略)影響を与える行為」と言えます。さらに、Aの発言によってBが傷ついていることからすれば、Aから行為を受けたBは「身心の苦痛」を感じていると言えそうです。 このように、法律から見るとAの行為は「いじめ」に該当します。では、みなさんの「いじめではない」という直観と法律の判断は何が違うのでしょうか。その理由は2つあります。まず、いじめの対象となる行為は、「心理的影響を与える行為」であり、その継続性や、程度は全く制限がありません。また、やられた側の感じる苦痛の程度も特に制限はないので、少しの苦痛を感じた場合であっても、「身心の苦痛」は認められるのです。 これは、いじめの定義が狭かったことで、深刻化するいじめを見逃してきてしまったという学びから、少しずつ定義が広がってきためです。判例や第三者委員会の報告書等を読むと分かるのですが、深刻ないじめは突然生じるものではないので、軽微な「いじめ」の段階で対応することで、深刻化を防ぐことが目的です。