苦悩の31歳に突如…町田から熱烈オファー「行くしかない」 J2で出番減り「腹決めてやろう」【インタビュー】
町田MF白崎凌兵、清水から移籍の舞台裏
FC町田ゼルビアはJ1初昇格、初優勝の快挙を果たすべく、今夏に積極補強を敢行。31歳のMF白崎凌兵はその1人として、J2清水エスパルスから加わった。プロ13年目のシーズン、苦悩の日々を送ってきた中で舞い込んだ突然のオファー。愛着あるクラブを去る――。悩みに悩んだ末に「迷いはない」とJ1再挑戦を決心した舞台裏に迫る。(取材・文=FOOTBALL ZONE編集部・橋本 啓) 【写真】“大河女優”町田戦の中継に映り込んだ「女神」 1人でスタンド観戦の瞬間「可愛い子いる」 ◇ ◇ ◇ 「素晴らしい話をいただいて、行かないっていう選択はもうなかったんです」。心を突き動かしたオファーを断る理由はなかった。 高校サッカーの強豪・山梨学院で世代屈指のテクニシャンとして注目され、2012年に争奪戦の末、清水入り。今季でプロ13年目。昨年あと一歩までJ1昇格に迫りながら、プレーオフで涙をのんだ清水でもう一度、J1昇格へ再チャレンジしようと決心した。 チームは開幕から上位争いを演じる一方で、白崎の立場は主力を担った昨季から暗転した。主戦場とする中盤ではMF宮本航汰の台頭もあり、開幕から途中出場が続くと、J2第10節から7試合ベンチ外に。ここ2年、リーグ戦では30試合以上に出場してきた白崎にとっては、屈辱以外の何ものもない。 「もう年齢的にも上のほうになってきてるんで、若手を鼓舞しながら自分のやれることをやろうっていうふうに切り替えて、普段のトレーニングだったり練習試合、試合もそうですけどやってはいました」。気付けば31歳。若手の手本となるべき立場になった以上、下手な振る舞いは許されない。プロとして、サブ組からチャンスを窺った。 5月26日のJ2リーグ第17節・水戸ホーリーホック戦、ホーム戦で8試合ぶりにスタメンへ抜擢されると、1-1の同点で迎えた後半8分、頭で今季初ゴールを叩き込み、2-1の勝利に貢献。「ここからだ」。そう信じて翌節も先発を飾ったが、無情にも立場は変わらなかった。 「やっぱりなかなか試合に出られないっていうことに対して、納得いかない部分、すっきりしない部分はもちろん持っていて……」。6月上旬からのおよそ1か月、ベンチ外や途中出場が続いた。そんななかで届いたJ1町田からの熱烈オファーに心は傾いた。家族だけに相談し、自ら決めた。「もう腹決めてやろう」と。 「苦しみながらチャンスをものにして、ゴール決めて、チームも勝った。ただやっぱり感覚的には序列が変わりそうになかったんです。シーズンが終わったタイミングでチャンスが来る保証もないし、サッカー選手である以上、このチャンスで勝負したかったんです」 昨年、今年とJ2で戦ってきた白崎にとって、J1の舞台は2022シーズン以来。苦悩の日々を送ってきたなかで、再びJ1へチャレンジできる境遇に恵まれた。当然葛藤もあった。清水はプロキャリアの中でも特別なクラブ。2019年から3年間は一度、鹿島アントラーズへ完全移籍しながら、再び拾ってくれたという恩もある。 「高卒から清水ではお世話になって、一度鹿島に移籍して、そこから戻ったっていう経緯もあったんでやっぱりそこでもう一度出るっていうところへの迷いはやっぱりありました」と白崎。それでも、自身が描くキャリアとの天秤をかければ迷いはなく、「もう行くしかない、行く以外の選択肢はないなと。こんな有難い話はないっていう、その1つですかね」と、当時の心境を思い返す。