ヤギの恵み・シェーブルチーズ 旬の甘さとコク、最高においしく味わえる名店
■東京・虎ノ門に3種を食べ比べられる店
東京・三軒茶屋の本店、2店目の六本木ヒルズ店は小売りだけだが、昨年11月にオープンした虎ノ門ヒルズ店は飲食できるカウンターがあり、チーズをワインと共に味わえる。ショーケースには数十種のチーズを陳列し、ワインは200種以上をラインアップ。ワイン目当てでふらりと入り、チーズに目覚める客も多いという。 ソムリエの資格を持つ野村さんをはじめ、スタッフ全員がチーズだけでなくワインのエキスパートだから、チーズの状態に合わせて王道からひとひねりまで、さまざまなワインの組み合わせができる。同じシェーブルでも熟成の度合いによって合うワインは変化していくのが面白い。 最初におすすめしたいのが、シェーブル3種の盛り合わせ(1200円)。購入する場合は100グラムが1500~2000円程度なので、リーズナブルに食べ比べできる一皿だ。ランマスでしか食べられないのが英国産の「ドーストン」。低温殺菌のヤギ乳で作り、ふわふわの食感が特徴だ。きめ細かくシルキーな滑らかさと上品な味わいを持つ。 シェーブル初心者におすすめなのが「クロタン・ド・シャビニオル」。コロンとかわいらしい形の中にヤギ乳らしい風味がしっかり凝縮し、とても食べやすい。ふわっとしたドーストンとは対照的に目が詰まり、ねっとりと舌にまとわりついて余韻が長く続く。 スペイン産の「トロンチョン」は、個性的なセミハードタイプ。しっとりと締まった硬めの食感で、外皮は香ばしく、内側はすっきりとした味。これもランマス以外ではなかなか食べられない。 チーズは自然のサイクルに沿って生きる動物からの恩恵であることを、気づかせてくれるシェーブル。この機会に、ぜひご賞味あれ。 文:畑中三応子(食文化研究家)
畑中三応子
東京生まれ。『シェフ・シリーズ』『暮しの設計』(中央公論社)編集長を歴任。近現代の食文化を研究・執筆。第3回「食生活ジャーナリスト大賞」受賞。著書に『ファッションフード、あります。』(ちくま文庫)、『熱狂と欲望のヘルシーフード』(ウェッジ)など。 ※この記事は「THE NIKKEI MAGAZINE」の記事を再構成して配信しています。