ヤギの恵み・シェーブルチーズ 旬の甘さとコク、最高においしく味わえる名店
■「そば屋で一杯」の感覚で立ち寄れるビストロ
プリフィクスの選択肢の多さで、ビストロ・サン・ル・スーは国内屈指の店。前菜は多いときは20種、メインディッシュは15~16種、デザートも10種前後から選べる。どれも手間がかかる正統派のフレンチで、いったい仕込みにどれほど時間をかけているのか、シェフの働きすぎが心配になるくらいだ。 実は新型コロナウイルス禍を機に、ランチとディナーに分けていた営業時間を午後3時~同10時までの通しに変更した。コロナ禍で夕食が早くなった人たちのライフスタイルに合わせるのと、「午後にそば屋で一杯」の感覚で立ち寄ってほしいという思いからだったが、自分たちの働き方改革にもなった。以来、仕込みに気持ちの余裕が持て、より集中できるようになったという。 そんなゆったりとした気分が流れる店内で、自分の好きなものを選んでコースを組み立て、ゆるゆると味わうのは最高にぜいたくな時間。あまりに料理の数が多すぎて迷ったなら、メインディッシュは「カスレ(ソーセージ・カモのコンフィ・豚足と白いんげん豆のオーブン焼き)」、デザートは「甘草とリカール風味のクレームブリュレ」と「はちみつ風味のヌガーグラッセ」が淑光さんのおすすめ。また、前菜の「パテ・ド・カンパーニュ」はヤギ乳チーズのサラダに並ぶ店の看板メニューである。
■「熟成士」もキーマン
東京都内で店舗展開するチーズ専門店「ランマス」はチーズ好きの間で評価が高い。フランスやイタリア、英国、スペインから大量生産の工場製ではなく、丁寧に手作りされた農家製のナチュラルチーズ、なおかつ各国一流の「熟成士」が丹精込めて熟成した名品のみを輸入販売している。 熟成士は独自の熟成庫を持ち、温度や湿度を管理しながら、チーズの反転やブラッシングなどを行って熟成させる職人。同じチーズでも熟成の良しあしで「月とスッポン」の仕上がりになり、チーズは生産者と熟成士の両輪がそろってはじめて最高の品質が実現する。フランスでは国家最優秀職人章(MOF)が設けられるほど重要な職業だ。 ランマスは現在、この季節にしかない珍しいシェーブルを入荷している。「ヤギ乳のチーズのおいしさを知るなら今」とマネージャーの野村滉一朗さん。シェーブルならではの爽やかな香りと軽やかさ、他のチーズにはないきれいな酸味が最高潮に達する。まさにベストな食べ頃だ。