“学び”での、「自分を成長させたい」思いと、「学習者に寄り沿う」大切さ
● イギリスの知的障がい者の団体とオンライン交流 ――2019年のスタート時と現在(2024年)は対面での授業のようですが、2020年からのコロナ禍の期間にはどう行われていたのですか? 2020年度はコロナ禍真っただ中での実施となりました。幸い、オンライン授業しかできない時期は最後の数週間でした。大学の方針で対面禁止となり、Zoomでの授業に切り替わったとき、KUPIの学生たち(以下、KUPI学生)はわくわくした表情を見せていました。「神戸大学の学生がやっている“オンライン授業”を、私も受けてみる」という気持ちだったのだろうと思います。オンライン授業をするためには、それぞれのご家族にも協力していただく必要がありましたが、なんとか、全員がオンラインでつながることができました。最初のオンライン授業で、KUPI学生たちが画面の向こうで興奮して大騒ぎになっていたのを覚えています。画面越しに友だちと会話ができることが楽しかったようですが、それも束の間、すぐに飽きてしまったようでした。KUPI学生たちの反応が鈍くなっていくにしたがって、授業から活気がなくなっていきました。 コロナ禍では、対面授業でも、密なコミュニケーションは控えなければなりませんでした。KUPI学生たちには、大きなアクション、豊かな表情、適切なボリュームの声で、言葉をはっきり伝えることが望ましい人が多く、「3密禁止」はコミュニケーションの大きな障壁になりました。 火曜日の私の授業も、KUPI学生と神戸大学の一般学生との密接なコミュニケーション抜きには成り立ちにくいので、授業計画の段階から困りました。教員が一方的に語る授業では、16回ももつわけがありません。KUPI学生のほとんどは、一方的に話を聞くことが苦手な人たちだからです。そこで、対面でのコミュニケーションが難しいのだったら、普段はコミュニケーションをとっていない遠くの人とコミュニケーションをとろうと考えました。 相手に選んだのは、イギリスの知的障がい者の団体です。以前、「日本の団体と交流したい」というオファーがあったことを思い出したのです。その団体と、計4回、オンラインで交流をしました。通訳を介してのやりとりなので、とても難しい取り組みでした。まず、お互いが通訳付きで自己紹介をします。発話がはっきりしない人もいますので、言葉を聞き取って翻訳すること自体が簡単ではありません。先方に英語で伝えるだけでも、そこそこの時間がかかるのです。そのあと、それぞれが質問しあうのですが、KUPI学生が質問し、それを私たちが翻訳して相手に伝え、相手方で質問の中身を話し合って、その結果を伝えてきて、それを日本語に翻訳してKUPI学生に伝えるという流れは、「クリスマスに何を食べるの?」という簡単な質問であっても、ものすごく時間がかかりました。 結果的に、私としては、なかなか意義のつかみにくい取り組みでしたが、当人たちには好評だったようです。KUPI学生からは「イギリス人と話をしたんだ」と自慢げに語る声が聞こえてきました。また、イギリスからは、「定期的にやろう!」というオファーが届き、現在でも年に1~2回のオンライン交流が続いています。