「常に安定せず、根無し草のように漂っている」ほぼ100%自然体、ふかわりょうという生き方
「いじられ芸人」「一発屋」「高学歴芸人」いずれからも一線を画し、独自の路線を貫くふかわりょう。いかにして、キャリアシフトを成し得たのか。あえて狙わず、時流に抗わず、自分の「好き」をそっと温め続ける、“ふかわりょうという生き方”とは。(取材・文:山野井春絵/撮影:殿村誠士/Yahoo!ニュース 特集編集部)
僕がいるのは「ぬかるんだポジション」
ふと気づけば、ふかわりょうというタレントは、なんだかちょっといいポジションにいた。 ゴールデンタイムに連日見かける……わけではないが、MCを務める夕方の帯番組は長く続き、大御所芸人たちにも可愛がられている印象。音楽活動はスタイリッシュだし、文才も発揮しているらしい。多くの芸人がYoutubeに活路を見出そうとするなか、お笑いチャンネルを立ち上げる気配もまだなさそうだ。 時代を軽々と駆け抜け、さりげなくシフトチェンジをして、独自路線を整えた希有な芸人。現在のふかわにはそんなイメージもある。 「独自路線、ですか。いや、どちらかというとこれ、『ぬかるんだポジション』だと思うんですけど、僕はそのぬかるみを決して嫌いじゃなくて。常に安定せず、根無し草のように漂っている。それを楽しめるようになったのは、ある種みんなを信用できるようになったからかもしれないですね。人間は100点満点の必要はなく、30~60点台の僕を、受け入れてもらえたらいい、と思えるようになったというか」
ふかわのキャリアを語る上で、外せないターニングポイントがある。30歳の時のことだ。 「いじられ芸人」として地位を極めつつあった出川哲朗が、ふかわの膝にポンと手をおき、「ポスト出川は、お前だからな」とバトンを渡そうとした瞬間があったという。その時ふかわの体に起こったのは、「反射的な拒否反応」だった。 「出川さんは、本当に尊敬しています。ただ、僕はそのポストを受け継ぐ器ではなかったし、自分自身が破綻してしまう直感がありました。20歳から芸人活動を始めて、比較的スムーズにテレビに出られたものの、自分自身と、テレビの中のふかわりょうがどんどん乖離していく日々。スイッチのオン・オフはあっていいと思うんです。でも、乖離がどんどん激しくなって、『これで大丈夫だろうか?』って不安な状態だった、そこに『ポスト出川はお前だ』って言われた瞬間の、体の拒否反応でした(笑)」 この時期のふかわは、多くの芸人たちが大御所になればなるほど、力を抜いて自然体になる事実に気づき始めていた。