「常に安定せず、根無し草のように漂っている」ほぼ100%自然体、ふかわりょうという生き方
「50代、60代になったとき、自然体でテレビにいられるように、ちょっとずつ自然体の自分に戻したい気持ちが芽生えたんです。つくり上げたイメージがあるけど、芸人として存在し続けるためには、ここで舵を切る必要があると。でも、具体的に目標があったわけではなくて、ただ航路を変えただけというか。大きな船にしがみついていた手を離して、流れに身を委ねた感じですかね」 40代も後半となった今、ほぼ100%自然体でいる。 「何か番組でスイッチをオンにしたとしても、別にそれは20代に入れていたスイッチとは違う。無理はしていなくて。自分なりに発信してきたことの核となる部分は、何一つ変わっていないんですけど、ここへ来て世の中が聞く耳を持ってくれるようになってきた気はします」 今年の春、ステイホーム中のふかわは執筆に没頭した。設定したテーマは、「自分自身をさらけだす」。それはふかわにとって恐ろしく不安な作業であり、直視を避けていたものだった。
「子どもの頃から抱えていた、うっすらとした鈍痛。その原因が、書くことでわかった気がします。それが最近、今までは周りに『どうでもいい』と思われていた、私にとっては『どうでも良くないこと』が、共感されるようになった気がしていて。『ふかわの言ってること分かるわ』っていう声も多く届くし。いや、これ、世も末かもしれない。やばい時代に突入するのかも」
お茶の間が「自然体」に敏感になった
弾けたバブルの残り香が漂う90年代。お笑い芸人がメインを張るバラエティ番組の全盛期、テレビ界に現れたふかわ。いまや、芸人たちを取り巻く環境は大きく変わった。 「当時は、若手芸人には人権のない時代。ディレクターが目も合わせてくれないなんて当たり前の、過酷な状況も味わってきました。とはいえ、今の若手はちやほやされてていいなあ、とも思えないんです。また別の苦労があると思うし、その時代によって生まれる甘味や苦味というものがある。どっちがおいしいということではないんですよね」 テレビには制約が増え、表現できる範囲が狭まったと言われる。