韓国「戒厳令」は6時間で解除、与野党は一斉に大統領批判…辞職拒否なら弾劾訴追の手続きへ
【ソウル=小池和樹】韓国の尹錫悦(ユンソンニョル)大統領は3日夜、政党活動を禁じ、報道機関の活動を制限する「戒厳令」を宣布した。野党が国会で政府高官の弾劾(だんがい)訴追案提出を繰り返していることなどを理由に挙げた。ただ、4日未明に国会で解除要求決議案が可決されると、戒厳令を解除した。 【動画】兵士が窓から国会に突入、韓国で戒厳令
国会には一時、軍部隊が進入し、抗議する市民が周辺に集まるなど状況は緊迫したが、戒厳令の解除に伴い部隊は撤収し、激しい衝突は回避された。今回の尹氏の強権的な手法には与野党から強い批判が出ている。
尹氏は3日夜に国民向けの緊急談話を出し、国会で過半数を握る最大野党「共に民主党」などが政府高官や検事らの弾劾訴追案提出を繰り返し、治安に関する内容を含めた予算案の削減を求めているとし「憲政秩序を踏みにじる明白な反国家行為だ。国会が自由民主主義体制を崩壊させる怪物になった」と主張。戒厳令の目的について「北朝鮮に従う勢力を撲滅し、憲政秩序を守る」とした。
戒厳司令官(陸軍参謀総長)はその後、「戒厳司令部布告令」を発出し、議会や政党など一切の政治活動の禁止、すべての報道と出版の統制、集会行為の禁止といった措置が示され、違反者に対しては令状なしに逮捕や拘禁ができ、処罰するなどとした。聯合ニュースによると、「非常戒厳」の宣布は1979年以来、45年ぶりで、87年の民主化以降では初めて。国会前などでは反対する市民ら数千人が集まった。
ただ、国会(定数300)では4日未明、出席議員190人全員の賛成で戒厳令解除要求決議案が可決。憲法の規定では、在籍議員の過半数が解除に賛成した場合、大統領は戒厳令を解除しなければならないと定めており、尹氏は宣布の約6時間後の同日午前4時半頃、解除を表明した。ソウル市内に展開した軍も、解除に伴って元の部隊に復帰した。
尹氏は戒厳令の解除表明の際、国会に対して「国の機能をまひさせる非道な行為」の即時中止を求めるとしたが、与野党からは尹氏を批判する声が上がる。