【甲子園熱戦レポート│1日目】「飛ばないからしっかり低い打球を打て」相手のお株を狙う滋賀学園の単打攻勢に見る“低反発バットでの勝ち方”<SLUGGER>
殊勲のタイムリーを放った杉本はこう振り返る。 「2ストライクから相手投手が代わったので、ボールを投げさせようという気持ちで入りました。低反発バットになってからセンターから逆方向に低い打球っていうのを全員で取り組んできたので、今日のバッティングにつながったのかなと思います。粘ってボールを見る結果でああなって良かった」 なんでも、滋賀学園のベンチでは試合途中から「いつものバッティング」という言葉が飛んでいたという。それは、低反発バットになってから意識した「強く低い打球」を打つことの徹底だった。 滋賀学園の長打攻勢から始まった試合だったが、有田工の単打を意識するバッティングが試合をひっくり返し、それを覆したのもまた滋賀学園の単打狙いのバッティングというのは実に面白い展開だった。 地方大会からいくつも試合を見ていて思うが、結局、チャンスのところで長打は続かない。今日の試合でも、以前のバットなら外野の間を抜けていたであろう打球がいくつもあった。 低反発バットでも長打は出る。それは試合序盤の滋賀学園の打撃からも明らかだ。しかし、擦ったような打球でも長打になっていた以前とは違い、状況によっては単打を狙うことをどれだけ意識できるかが試合を左右するカギになるのだろう。 滋賀学園の山口達也監督は話す。 「どうしても下からバットが出るというか、ボールの下にバットが入っている状態でしたので、叩いていけとそれが後半はうまくいったと思う。(低反発バットになって)大きくバッティングを変えたわけではないんですけど、今まではアバウトに振っていっても結果につながっていた。でも、今はそうではないので、芯でしっかり捉えないといけないと。『飛ばないからしっかり低い打球を打て』という指導は選手たちの頭には入りやすかったかなと思います。前のバットやったらアバウトに行ってましたから」 両校がお互いの力を出し合った開幕戦。低反発バットへの向き合い方が見て取れた試合でもあった。 取材・文●氏原英明(ベースボールジャーナリスト) 【著者プロフィール】 うじはら・ひであき/1977年生まれ。日本のプロ・アマを取材するベースボールジャーナリスト。『スラッガー』をはじめ、数々のウェブ媒体などでも活躍を続ける。近著に『甲子園は通過点です』(新潮社)、『baseballアスリートたちの限界突破』(青志社)がある。ライターの傍ら、音声アプリ「Voicy」のパーソナリティーを務め、YouTubeチャンネルも開設している。
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