ドルに代わる国際通貨の覇権をBRICSは握れるか
第2次世界大戦後にアメリカを中心につくられた為替相場安定のメカニズムであったブレトンウッズ体制の中で、アメリカの通貨が国際決済通貨になったのは、アメリカという覇権国家による世界支配という前提があったがゆえのことである。 どこの国家のものでもない、バンコールという通貨の発行を主張したケインズ案をアメリカが拒否したのは、当然であったともいえる。 また旧ソ連圏で振り替えルーブルが使われていたが、名前が示すとおり、ソ連という覇権国家のルーブルに有利な決済通貨であったことは間違いない。
ただ、今のドル支配という体制に対する不満は、非西欧諸国に多くあった。アメリカドルがなければ国際貿易ができないことが、それらの国のアメリカ従属を生み出し、アメリカに都合のよい体制が生まれ、永久にアメリカドルによる借金漬けから脱出できないという状況を生み出していたからである。 アメリカの経済制裁が続く限り、SWIFT(国際銀行間通信協会)を使ったドル決済はできないわけで、中国の元(ユアン)、ロシアのルーブル、インドのルピーなどが、BRICS諸国の国際決済通貨としての位置を取り始めたことは間違いない。
しかし、これならば中国のユアンまたはルーブルが、ドルにとって代わるだけのことであり、アメリカ支配体制が中国、ロシアの支配体制に変わるだけである。 それを避けるためにも、新しい通貨案を構想しなければならないはずである。まして相互の互恵的貿易を実現するには、一国の通貨を決済通貨にするわけにはいかない。 ■決済通貨の選択と安定性という問題 そこで新しい国際通貨構想が出ているのだが、それはIMF体制のような一国通貨を基軸通貨とすることではない。しかも、IT技術の発展の中、電子マネーによる決済である可能性が高い。
しかし、そのためにはブロックチェーンなどの最新技術が使われるだろうが、通貨の発行額がインフレにならない手段を構築しなければならない。 経済学の最大の難問の一つが通貨の安定である。 1844年にイギリスではピール銀行条例によってイングランド銀行券発行のための準備金規定を設けたが、それによっても通貨の過剰発行を防ぐことは容易ではなかった。 またドルと金とのリンク(1オンス35ドル)というブレトンウッズ体制も1971年にアメリカ経済の不振によって廃棄され、ドルは発行制限を持たない通貨となってしまった。