横浜市「26万人の教育ビッグデータ」を本格活用へ 「ラボとアカデミア」で新しい学びや環境を創造
学習ダッシュボードの導入で何が変わった?
横浜市教育委員会は、今年6月から市内の全小中学校・義務教育学校・特別支援学校(計496校)で「横浜 St☆dy Navi(よこはまスタディナビ)」の運用をスタート、9月には「横浜教育データサイエンス・ラボ」も開始した。全国的に教育現場におけるデータ活用が途上である中、約26万人という膨大な教育ビッグデータを持つ同市がついにその本格活用に動き出した形だが、どのようなビジョンの下に取り組みを進めているのだろうか。 【図で見る】横浜市が立ち上げた「ラボとアカデミア」とは? 今年6月から横浜市教育委員会が運用を開始した「横浜 St☆dy Navi(以下、スタディナビ)」は、いわゆる学習ダッシュボードだ。同事務局学校教育企画部教育課程推進室長の丹羽正昇氏は、「1人1台端末を使った新たな学びの創造」の推進と、同市が中期目標としている「教育DX」の観点から導入に至ったと話す。 「スタディナビ」では、児童生徒が入力したデータを教職員が自身の1人1台端末から即時に確認できる。例えば、毎朝の身体や心の調子を入力する健康観察、授業ごとの振り返りなどの授業アンケート、自学自習用の「はまっ子デジタル学習ドリル」などだ。このほか教職員は、横浜市独自の学力・学習状況調査の分析チャート、体力運動能力調査の結果なども見ることができる。 「今後は、図画工作や美術などで自分が作った作品や、音楽の時間に披露した歌や演奏を1人1台端末で録音・録画して残すなど、学習プロセスを振り返ることができるポートフォリオ機能も開放する予定です」 まだ導入して半年ほどだが、どのような活用の仕方が見られるのだろうか。 「まず健康観察については、スタディナビを使うことにより、端末で学校長をはじめ教職員全員が情報を共有できるので、児童生徒の不調の早期発見や対策が可能となりました。健康観察に応じない児童生徒も、それ自体が答えだと捉え、声かけなどの対応を取っています。職員室の大型モニターで児童生徒の状況を見える化し、養護教諭や支援員も含め情報把握ができるようにしている学校も。同じく授業アンケートやドリルの進捗状況についても教職員全員で情報共有できるため、児童生徒を真ん中においた議論や対応がより充実し、具体化していく効果もあると考えています」 実際、丹羽氏が学校に行ってみると、児童生徒たちの端末活用が今まで以上に日常化したように感じたという。 「例えば登校後は机の上に端末を用意して健康観察をするところから始まり、ロイロノート・スクールで昨日できなかった課題をやったり、教職員から配布された学習資料に目を通したりと、朝の時間を有効活用できるようになっています。教職員も端末を念頭に置いた授業づくりに注力し、授業のあり方もずいぶん変わってきています。今後はAIドリルも導入し、どんなログをどのタイミングで取るかを議論したうえで学習ログを集め、児童生徒1人ひとりのオーダーメイドな学びが可能となるようにしていきたいと思っています」