横浜市「26万人の教育ビッグデータ」を本格活用へ 「ラボとアカデミア」で新しい学びや環境を創造
教育を“哲学”する「アカデミア」もスタート
今年11月21日に開催された2回目のラボでは、横浜市立大学との共同研究契約の締結式を行うとともに、「子どもの心の変化をとらえ、安心な学びの環境をつくる『横浜モデルの開発』」の具体的な取り組みについても発表した。 将来的には、リアル(学校・大学・区役所・児童相談所)・オンライン(スタディナビを使ったAIチャット相談)・バーチャル(メタバース空間内でのバーチャル相談)の3層空間で子どもの心のケアを行っていく方針だという。まずは小学校1校、中学校1校をモデル校に指定し、スタディナビに手立てを順次実装して運用していくという。 「有効なデータ分析を行うには大きな母数が必要ですし、ほかの自治体でも参考にできるパターン化も可能になります。ラボを通じて課題解決していくという取り組みは、四国4県に匹敵すると言われる約26万人のデータがある横浜市だからこそ、できることなのかもしれません」 2025年度からは「横浜教育イノベーション・アカデミア(以下、アカデミア)」も立ち上げる(12月中に試行予定)。「横浜教育データサイエンス・ラボ」と同様の座組みで、約50の大学と教職員、現役の大学生や大学院生、企業関係者などが集ってオンラインやメタバース空間で議論や研修をする場にしていくという。 「例えば、AIドリルを使ってどのような授業を行っていくか、生成AIは教育現場でどのように活用されるべきかといったテーマについて、大学関係者や教員を目指す大学生・大学院生などが、オープンエンドな議論をしていく予定です。ラボは教員の経験・勘と教育ビッグデータを基に仮説を立て、アカデミアはその仮説を検証してラボに対して具体的な手立ての提案やデータ分析の提案をし、ラボはまたその助言を基にデータ解析や学校でのモニターを行う。そのようにラボが教育を『科学』してアカデミアが『哲学』する形で学びをつくりあげていく体制を確立したいと考えています。 本市の中期計画に教育DXが位置付けられていること、また教育長が以前、本市のデジタル統括本部の本部長を務めていたことなどからも、教育データの活用は非常によい状態で走り出しました。横浜市のデータの特徴は、約26万人という密度の濃さ、そして小・中・義務教育学校・高等学校・特別支援学校を合わせて505校もの学校があるという多様性にあります。しかも、1人の教育長でグリップしている事例はほかにありません。こうした強みを生かし、新たな学びの形を創造していきたいと考えています」 (文:國貞文隆、注記のない写真:横浜市教育委員会提供)
東洋経済education × ICT編集部