石破首相が所信表明へ:岸田路線の継承が鮮明に:日銀利上げへの慎重発言と円安の影響
選挙を睨んだ戦略か
こうした石破首相の発言は、金融緩和の長期化がもたらす弊害を指摘する従来の見解からはやや修正された印象もあるが、方針が大きく修正されたのかどうかについては、まだ慎重に見極める必要があるだろう。現時点での発言は、目先の総選挙を強く意識したものである可能性が高いとみられるからだ。まずは、選挙に勝ち、政権基盤を固めることが、石破政権の最優先課題なのだろう。 石破首相が自民党総裁選に勝利した直後に利上げ観測から円高が進み、株価が大きく下落したことが新政権へダメージになるとの危機感が、こうした発言の背景にある可能性が考えられる。また、目先に迫る衆院選挙に向けた短期集中型の政策アピール、という側面もあるかもしれない。 ただし、こうした発言を受けて再び円安が進むと、物価上昇圧力も高まり、国民生活を圧迫しかねない。この点から、石破政権が追加利上げに慎重な姿勢を強調することが、果たして選挙に有利に働くのかどうかについては不明確だ。そして、石破政権の基本的な政策スタンスは、選挙を終えてからでないと明確には読めないと考えられる。 木内登英(野村総合研究所 エグゼクティブ・エコノミスト) --- この記事は、NRIウェブサイトの【木内登英のGlobal Economy & Policy Insight】(https://www.nri.com/jp/knowledge/blog)に掲載されたものです。
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