高校卒業後に女子競技者が激減するのはなぜか? 女子Fリーグ・新井敦子が語る「Keep Playing」に必要な社会の変化
ウガンダでの活動を通じて感じた「人間の逞しさとスポーツの素晴らしさ」
――ウガンダには体育教諭として派遣されていたんですよね。現地の人々と一緒にサッカーをする機会もあったと思いますが、人々の反応はどうでしたか? 新井:ウガンダでもサッカーはとても人気のスポーツで、特にプレミアリーグは大人気でした。プレミアリーグで活躍する日本人選手も有名で、私が日本人とわかると、アーセナルの冨安健洋選手の話などがよく出ました。しかし、ウガンダではサッカーやスポーツは男性がするものという意識が強く、私がサッカーをしているところを見ると「サッカーできるの!?」と、とても驚いた様子でした。 当時は週2回ほど、私自身がサッカーする環境を確保するために、社会人男性のチームに混ぜてもらってプレーしていました。 ――それは貴重な経験ですね! 体育教諭としての活動はいかがでしたか? 新井:現地の活動では、主に仕事先の学校の生徒に体育の授業をしたり、サッカーを教えたりしていました。2つの学校に勤務していたのですが、一つはウガンダでも珍しく女子サッカー部がある中等学校(日本の中学・高校)で、もう一つは小学校の教員を養成する教員養成校で、女子はあまりサッカーをしない学校でした。教員養成校では、学校対抗の地域スポーツ大会に女子のサッカーチームを作って出ることになったので、短期間ではありましたがサッカーを教えていました。 写真の赤いユニフォームは、男子のユニフォームを借りたものです。運動靴を持っていない生徒が多いので、裸足でプレーする生徒が大勢いました。対戦チームにはスパイクを履いている人もいて、踏まれたり蹴られたりしても一生懸命プレーしていました。そんな選手のひたむきさに感動しました。 中等学校の女子サッカー部では、WEリーグのアルビレックス新潟レディース様から、サッカー用品の支援やオンライン交流会をしていただきました。普通に生活をしていれば絶対に出会うことのない、日本のサッカー選手とウガンダの女の子たちが交流することができたのもサッカーの力だと思います。アルビレックス新潟レディースの皆さんと話をした後は、「卒業後もサッカーを続けたい」と言う生徒がいたり、「海外リーグでプレーしたい」と話す生徒もいたりしました。 ――サッカーに夢中になる生徒たちの姿を通して、スポーツが人々に与える力や希望を感じたのですね。 新井:はい。ウガンダは難民に寛容な国だったので、隣国の南スーダンやコンゴ民主共和国などからたくさんの難民がウガンダに来ていました。そんな難民の女の子たちや、ウガンダの孤児、ストリートチルドレンたちを対象に行われているサッカー教室にも何度か参加しました。笑顔の裏には、私たちが想像を絶するような人生を歩んできた過去があると知りましたが、それでもサッカーを楽しむ彼女たちの姿に人間の逞しさとスポーツの素晴らしさを感じました。