アジア回遊編~モンゴル(9)トゥバ人のオヤジに襲われ次の町へ 奇妙なまでに多い理髪店で散髪、どう見ても〝かの国〟の総書記に
【実録・人間劇場】 アルタイ山脈の奥地に住んでいるという少数民族、トゥバ人。 私は彼らと一夜を明かすため、モンゴル西部の都市ウルギーから車で約8時間をかけ、その集落にやってきた。日本には現存しないレベルの秘境で、その自然の偉大さに感銘を受けたのだが、そこで暮らすトゥバ人の男はわれわれと変わらない卑しい人間だった。 【写真】市立浦和南送球部のジャージを着たモンゴルの青年 妻子持ちのトゥバ人のオヤジが「金を払うから抱かせてくれ」と私に迫ってきたのである。しかも、拒否すると私を力任せに押し倒し、首元にむしゃぶりついてきた。 まさかトゥバ人に襲われるとは思ってもいなかったが、私は「アルタイ山脈に暮らす少数民族」という響きに幻想を抱いていたのかもしれない。自然と共生していても、所詮は人間。欲望の塊である。 トゥバ人と自分に失望した私は翌日、再び約8時間をかけ、ウルギーの町に戻った。小さな町だが文明があった方がやはり落ち着く。もう秘境や少数民族といった浮世離れの存在に憧れを抱くのは止めにしよう。 何か文化的なことをしたい。少しだけリッチなレストランで食事をし、カフェでコーヒーを飲み、ホテルに併設されている個室サウナに入り、5月にしては冷たいモンゴルの風を浴びながら町を歩いていると、やけに理髪店が多いことに気付く。 ウルギー市の人口は約3万人と少ない。それなのに歩いていける範囲に理髪店が20軒以上もあるのだ。かつての中国では実はその半分以上が違法風俗であったりしたわけだが、モンゴルに限ってはそういうことではなさそうだ。 後にウルギーに住んでいるモンゴル人に聞いたところ、やはり「理髪店は飽和している」という。モンゴルでは比較的誰でも理髪店をオープンできるので、技術がなくてもとりあえず店を出す人が多いそうだ。 伸びきった髪にアルタイ山脈の砂埃がまとわりついている。私は適当な理髪店に入り、髪を切ることにした。 その理髪店は20代前半の若者が3人で切り盛りしていた。こういうときは細かい指示はせず、任せてしまうのが粋ってやつだ。「モンゴルポピュラースタイルで頼む。どうなっても文句は言わない」とリクエストをすると、3人が顔を見合わせている。誰が担当するのか譲り合っているのだ。 「誰もやらないなら俺がやってみたい」といった感じでハサミを持ったのは、ソフトモヒカンの男の子。腕まくりをしてかなり張り切っている。
【関連記事】
- アジア回遊編~モンゴル(8)私の尻を物欲しそうになでてきた父親 トゥバ族集落で悪夢の展開 近くに母親と息子も…正気ではない
- アジア回遊編~インド・ネパール(32)インドでは「人の命が軽い…」売春窟の恐るべき深さ 逃げ道示す風俗嬢、私は脱兎のごとく逃げ出した
- アジア回遊編~インド・ネパール(31)鉄格子にしがみつき必死で助けを叫んだ ニューデリー最大の売春街「GBロード」に潜入
- アジア回遊編~インド・ネパール(20) 旅に飽きた者が堕落する街・カトマンズ ゲストハウス前でシンナーを吸う子供たち
- アジア回遊編~タイ(12)~かつてバンコク有数の立ちんぼスポット「グレースホテル」へ もはや中東、服に染み込むスパイスの匂い