連結売上高「2兆円以上」!東京スカイツリー、エスコンフィールドHOKKAIDOなどを手がけた大林組が取り組む“DX事情”についてDX本部長が言及
◆“DX化”を進めるうえで意識したことは?
紅林さんは大林組に入社した際、第一印象としてはDXが進んでいると感じたそうですが、その一方で「世間で言われているDXに必要な手段をひと通り打っているイメージはあるものの“表層的”という印象を受けました。私自身の考えとしては、DXは“ダイナミックケイパビリティ(変化への対応力)”を高めることが本質で、それは経営のアップデートとセットにしないと本当の価値は生まれないと思っているのですが、(入社当初は)施策だけが進んでいる印象を受けました」と回顧。 そんななか、紅林さんがDX化を進めるうえで意識したのは、変革したことで“現場へのしわ寄せ”がいかないように、慎重に前に進めることだったと言います。「建設業は一定の制約があり、変化への対応の内部的要求があまり高くないんです。そこを無理矢理変えるのは大変ですし、現場のことを考えれば、些細なミスが人命に関わるので、少なくとも現場に大きな負担の生じない変革を心がけなければいけない、そして、時間をかけてでもしっかり前に進むことが重要だと思いました」と振り返ります。
◆建築業界の未来を担う“BIM”とは?
建築業界のデジタル領域においては、2010年代からBIM(Building Information Modeling)の活用が広がっています。これは建築に必要な図面をデジタル化し、そこに情報を埋め込んで再利用可能にしたもので、「建築業界には以前からCAD(Computer Aided Design)というアプリケーションがありますが、そこに、さらにいろいろな情報を付加したものがBIMです。しかも、BIMの世界はコンピュータ処理されるので、三次元、時系列のデータまで取り込めば四次元までできます」と紅林さん。 さらには、「デジタルの本質的なメリットは、情報共有のスピードと簡単に再利用できること、そこが生産性を上げる大きな鍵になります。逆にいうと、BIMは人力で大量のデータを打ち込まなければいけないので、最初のモデルを作るのに労力がかかります」と解説します。 紅林さんいわく、そんなBIMの現在の完成度は10%未満だそうで、100%に行き着くには最低でもあと30年くらいはかかるだろうとのこと。ただ、完成した際には、いろいろなことができると言い、「例えば、施主から変更依頼を受けたときに、瞬時に再見積もりが算定できて施工の手順も反映される、それが1つの理想形です。今は再見積もりを出すだけでも1ヵ月以上かかり、想定外のコストがかかってしまうことがありますが、そうしたことがなくなると思います」と語ります。