市川團十郎×佐藤琢磨、同い年のふたりが歌舞伎とレースに共通点見出す。白熱するトークの裏で11歳の新之助が大物ぶりを発揮!?
11月24日、東京の歌舞伎座でF1ラスベガスGPのパブリックビューイングが実施された。来春の日本GPのアンバサダーを務める十三代目 市川團十郎と、その息子である八代目 市川新之助、そしてレーシングドライバーの佐藤琢磨がトークショーに登場し、レースと歌舞伎について様々なテーマで語った。 【動画】歌舞伎+F1! 市川團十郎が、F1テーマに乗って登場 先代である父が大のF1好きだったことで、アイルトン・セナが活躍していた頃のF1を見ていたという團十郎。歌舞伎座には2016年のフェラーリ、2021年のレッドブル、アルファタウリのマシンが展示されたが、現代F1マシンの進化に目を丸くしていた。 トークショーの中で、伝統芸能である歌舞伎にも時代に合わせて変化をする部分はあるのかと佐藤に尋ねられた團十郎は、「伝統を守ることは一番大事にしておりますが、そればかりではならぬという精神は忘れてはならない。あぐらをかくわけではありませんが、常に前に進もうとすることが伝統文化としての現状維持という形に繋がるんではないでしょうか」と語ると、佐藤も「まさにF1も同じ」だとして、常に前進を続けなければいけない世界なのだと説明した。 「F1では『これでいいだろう』と相手を待った瞬間に停滞を意味します。ですから常に前に進んでいくことで、ラスト1%のところでしのぎを削るのがF1です」 團十郎と佐藤は共に1977年生まれ(佐藤は1月生まれなので、学年ではひとつ上となる)。共に父の背中を見て育つ息子を持ち、その息子たちは歌舞伎俳優、レーシングドライバーという父と同じ道を歩んでいるという点でも共有している。また佐藤はホンダ・レーシングスクール鈴鹿の校長、そしてホンダ・レーシングのエグゼクティブ・アドバイザーとして、次世代を担う若手ドライバーの育成・指導に広く尽力している。 父から受ける歌舞伎の指導について新之助に質問が飛ぶと、「お父さんはすごく優しいのですが、大事なことはしっかりと教えてくれます。こっちもその大事な気持ちを受け取らないといけないという思いがあります」と返したが、これについて團十郎は「伝えようと思っても各々の“受信機”が違います。ですから我々としては“気付き”を与えること。そこに切り替えないといけません」と付け加えた。 これに対して「台本があるんじゃないかと思うくらい(笑)。僕らも同じです」と笑う佐藤は、若手を指導する上で気付きを与えることにフォーカスしていると語った。 「若い世代の子たちはアドバイスが欲しいので色々と聞いてくるんですけど、それをいちいち教えたとしても、その瞬間瞬間はできるんだけども、舞台が変わった時にできなくなっちゃう。自分が理解するためにはまさに気付きが必要で、その部分はスクールをやる上ですごく重要視しています」 同い年のふたりで白熱した指導論やトレーニング論。その合間合間で11歳の新之助に質問が向けられるという形でトークショーは進んだが、彼の独特な空気感の返答も印象的だった。 自分へのご褒美としてどんなものが食べたいかと聞かれた新之助は「食事にこだわっているところもありますが……〇〇の日だからこれが食べたいというものはありません。普段から自分の好きなものを食べてます(笑)」と返して会場はドッと沸いた。 またイベント後の囲み取材でも、F1マシンについて「運転してみたいですよね、やっぱり。300km/hは出せないかもしれないですが。120km/hとか。できれば250km/hくらい出せれば(笑)」と語る父に対し、新之助は「怖いので実際に運転してみたくはないのですが……」と苦笑しつつ「乗ってみたいですね」と続けた。 そして最後に「今年の漢字を1文字で表現すると」と記者から問われると「楽」と答えた新之助。父から「その心は?」と聞かれると、こう呟いた。 「……思い付かなかったから」 報道陣にも大ウケだったが、團十郎は「(質問の)フリがちょっとね。もう少し後、12月くらいに聞かれたら良かったよね」と息子をフォローした。
戎井健一郎